──菅首相はやり込められてしまった印象です。

 菅さんは、人はいいんだろうけど、ちょっと言葉が少なすぎるよね。口下手なんですよ。批判が多いけれども、あの人は本領を発揮すべきところで発揮できていないと思う。それこそ前例がなかったふるさと納税を作ったり、デジタル化の推進だったり、縦割りを解消してきた実績があるんだから。

──そうした実績はどこで発揮できますか。

 今一番の問題は医療崩壊と言われていて、実際に病床のキャパシティーが少ないのは確かなんでしょう。これは大学病院と開業医という、いわゆる縦割りが原因。この構造を解消するのは、菅さんにとって一番得意な分野なはずなんですよ。トップダウン式で役人を使って自分はやれるって豪語していたんだから、そっちをやればいいと思うんだよね。

──菅首相のリーダーシップが物足りず、国民の間には政治不信が広がっていると感じます。

 政治不信は今に始まったことじゃなくて、常にそうでしょ。ただ、日本人は権力者にそれほど強いリーダーシップを求めていないような気がしているんですよ。たとえば、トランプ大統領みたいな強権的なリーダーをはたして日本人は求めているのかな。涙ながらに演説したドイツのメルケル首相みたいなことを菅さんに求めるのかな。僕は嫌だね、そんなリーダーは。菅さんが涙しながら突然訴えたらさ、引くよね(笑)。菅さんはたしかに頼りないけど、あの程度の存在でいてほしいって気持ちもどこかにあるんじゃないかな。ボコボコのけちょんけちょんに言われるようなね。

──政府の対策は後手に回っているとの批判が多く聞かれます。

 後手後手って言うけども、どうしたって後手になるんですよ。それは経済を止めたくない、でもコロナも収束させたい、そのギリギリのラインを狙うからだよね。東京五輪にしてもそうで、決断するタイミングとしてはまだ早くて、開催する前提で引っ張れるまで引っ張るでしょう。これまでは引っ張って期待が高まったところでやっぱりだめでしたと。この連続なんだよね。どうしたってギリギリでの急ブレーキになるんだから、「なんだよ期待させといて」と落胆したり怒ったりするのではなく、もう少し世の中が理解したほうがいいと思う。

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