STEAMライブラリーは今年3月からの公開を予定する。事業が始まってわずか半年という異例の早さだが、前出の浅野室長は「完成度が高くなくても、とりあえずやってみる。試行錯誤し、磨いていく」と意気込む。
■「インセンティブない」
一方、「未来の教室」の実証事業で行った教員へのアンケートでは、学びをSTEAM化する上でのハードルも浮かび上がった。
アンケートで最も多かった回答は「教員にとってインセンティブがない」。他に「生徒の評価基準がわからない」「大学入試とつながるのかわからない」「実施する時間がない」といった回答も目立った。
現在、STEAM化を軸としたカリキュラム開発に取り組んでいる横浜創英。工藤勇一校長は、昨年3月まで東京都千代田区立麹町中で大胆な改革に取り組んだことで知られ、「未来の教室」ではEdTech(エドテック)研究会委員も務める。その工藤校長も、「教科を軸としたカリキュラムに従って、一斉授業を行ってきた日本の教育を、一気に変えることは難しい。麹町中でもできなかった」と語る。
一方で工藤校長は、課外の活動からSTEAM化を始められるはず、と考えている。麹町中では生徒に購買の経営や、行事の運営、修学旅行の企画を任せた。これらはプロジェクト型の学びになる。数学にAI教材を導入して習得時間を短縮し、浮いた時間をプロジェクト型の学習に充てるといった工夫もした。
教育の未来は変えられるのか。
「最大のネックは、大学入試です。入試改革が始まっていますが、教科の合計点で合否が決まるという一般入試のシステムが変わらない限り、プロジェクト型学習もアートも『入試に関係ない』という話になってしまう。日本の子どもは忙しいので、生きる力をつけるのに本当に必要か、という観点で学ぶ科目もゼロベースで見直し、余裕を作る必要がある」(工藤校長)
(編集部・石臥薫子)
※AERA 2021年2月1日号より抜粋