科学、技術、工学、芸術、数学をかけ合わせて学ぶ「STEAM(スティーム)」教育が、世界各国で注目されている。日本でも国が推進し、従来の教育から大きく変わろうとしている。AERA 2021年2月1日号は、国内での取り組みを紹介する。
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教育の世界的潮流、STEAMを知れば知るほど、静岡聖光学院の先生たちは思った。
「これって我々がやってきた『ビギリオン』と同じだよね」
美術、技術、理科、音楽の頭文字をとってBIGIRION(ビギリオン)。静岡県下唯一の男子中高一貫校である同校では、大学入試教科の学びだけでは、子どもたちがよりよい人生を生きていくのには不十分、との考えから、四つの実技科目を相互につなげて学ぶ授業づくりを進めてきた。
ユニークなのは食をテーマにした取り組みだ。例えば2019年、料理レシピ検索サービスのクックパッドと協力して実施した「料理から世界を理解!」というワークショップでは、まず同校敷地内の畑で野菜を育てて収穫。クックパッド社員で世界中の台所を訪ね歩く“台所探検家”の岡根谷実里さんから、ブルガリアでヨーグルト生産が盛んなのは東西冷戦に理由がある、といった食の背景にある歴史を学んだ。次に自分たちで世界の料理にまつわるクイズを出題・解説。そこから興味が広がった生徒有志は、収穫した野菜持参で東京のクックパッド本社へ。今度は創作料理にチャレンジし、さらになぜ日本では料理をする男性が少ないのかというジェンダーギャップについても、解決策を考えた。
今年度はクックパッドに加え「研究者であれ」を合言葉に中高生のための学会「サイエンスキャッスル」を開催するリバネスと組み、経済産業省の「未来の教室」の実証事業に参加。食を切り口にSTEAM授業の開発に取り組んだ。
同校の田代正樹副教頭は言う。
「今回は、近い将来人類が直面する『タンパク質不足』を題材に、社会、理科、国語、英語など複数の教科の先生たちが、自分の教科だったらどんな授業をするか、アイデアを出し合いました。やってみると先生たち自身が『そんな視点があったのか』と驚き、教科を越えて学ぶ意義を教員自身が見いだしました」