アクセンチュアが行った脳波コンサート。参加アーティスト:大山平一郎(ヴィオラ)、枝並千花(ヴァイオリン)、大塚百合菜(ヴァイオリン)、金子鈴太郎(チェロ)。Music Dialogueに関係が深いアーティストを招いたという。写真はアクセンチュア提供
アクセンチュアが行った脳波コンサート。参加アーティスト:大山平一郎(ヴィオラ)、枝並千花(ヴァイオリン)、大塚百合菜(ヴァイオリン)、金子鈴太郎(チェロ)。Music Dialogueに関係が深いアーティストを招いたという。写真はアクセンチュア提供
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 生活のなかで科学や技術に触れないことはなく、しかも日進月歩だ。変化著しい時代にビジネスの現場で求められるのが、科学、技術、工学、芸術、数学をかけ合わせられる「STEAM」人材だ。とりわけアート的な考え方は、世界を大きく動かしている。AERA 2021年2月1日号から。

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 バイオリンが奏でるやさしく柔らかい音色。ゆったりとした時間が静かに流れる。

 落ち着いた空間を創り上げる演奏者の頭には、ぐるりと黒いバンドが巻かれている。その姿はさながらサッカー選手のようだが、髪が振り乱れるのを防ぐためではない。

 演奏者たちの頭部につけられたのは、脳の状態を示す「脳波測定器」と呼ばれるデバイス。リラックスしているのか、緊張状態にあるのか、演奏に入り込んでいるのか──単に聴き入るだけでは感じ取れない、心の揺れを可視化する「脳波コンサート」で試されていた。

 これはコンサルティング大手アクセンチュアの社内部活動の一つである「芸術部」が企画したイベント。リラックスした集中状態の「α波」、緊張状態の「β波」など五つの波をレーダーチャートで視覚化。演奏者の背後にはそれらを示す大きなモニターが置かれ、リアルタイムに脳の動きが見て取れる。なめらかにクラシックを奏でる演奏者の“揺らぎ”が可視化される。

フロアで「五感」を刺激

「演奏者の脳波が少し乱れた箇所がありました。後で聞くと、リハーサルの時に失敗したフレーズだったそうです。音楽を聴いているだけではわからなかったけれど、脳波では捉えることができました」

 そう分析するのは、脳波の解説を担ったアクセンチュアの保科学世(ほしながくせ)さんだ。同社AIグループ日本統括でAIセンター長も務め、本人いわく「バリバリの理系」。人間を深く理解できるAIを作るためにも、芸術を科学的に捉えたい──そんな思いで実現したコンサートだった。

 活動のきっかけは、アートの重要性への気付きだった。

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