作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、日本におけるえい児殺しの背景について。
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栃木県のショッピングモールのトイレで出産し、乳児を死なせたとして高校生が逮捕された。
トイレでの出産、どれほど恐ろしかったことだろう。しかも出産してすぐの逮捕だ。彼女は今、どのような扱いを受けているのだろうか。まずは柔らかいベッドで休み、カウンセリング態勢を整えてあげてほしい。
増えているのか、または昔から変わらないだけなのか。商業施設やコンビニのトイレなどで1人で出産し、その後に乳児を遺棄し、逮捕される女性のニュースを頻繁に目にするようになっている。
昨年11月には空港のトイレで出産し、公園に遺棄した23歳の女性が逮捕された。彼女の名前も顔もメディアにさらされ、まるで社会的制裁が与えられたようなものだった。10月には岡山で35歳の女性が出産直後に用水路に子どもを捨てて逮捕。彼女には内縁の夫と2人の子どもがいた。また同じく昨年には、広島、熊本、岡山で解雇を恐れたベトナム人技能実習生が出産後に遺棄したとして逮捕されている。妊娠を理由に解雇も帰国もさせてはいけないのだが、その権利が女性たちには周知されていなかった。ベトナム人技能実習生のほとんどが借金を背負って来日し、雇い主に「妊娠するな」と言われた女性も少なくない。さらにベトナムなら合法的に使用できる中絶薬が日本では認可されておらず、病院で高額な手術を受けなければならないことも、彼女たちを追い詰めたという。
……と記しながら改めて気づくが、妊娠しても相談する人がおらず、中絶したくても費用がまかなえず、外国なら手に入る安全で安価な中絶薬を使うこともできず、そうこうするうちに中絶可能な21週が過ぎてしまうという現実は、借金を背負い、解雇におびえ、最低限の生活を強いられているベトナム人技能実習生も、この国に生まれ育った女性たちも変わらない。