笠井:ある方が悩みを投稿すると、別の方がそれに応えるという「つながり」が生まれる。それに感動しました。ただ、そこに情報を求めることはしませんでした。ブログやSNSの内容は前向きなものにしたかったけど、抗がん剤治療の副作用のつらさなどを覆い隠して「元気にやってます」とだけ伝え続けるのは違うと思った。前向きな部分とシビアな部分、両方を伝えるようにしました。
茅原:家族、とくに子どもたちに対しては、「つらい顔は見せたくない」と、シビアな部分を言わなかったよね。子どもたちは一般の方と同じようにブログを読んで、「そうなのか」と考えていたようです。
笠井:子どもたちは大きく変わりましたよ。料理もするようになったし、僕が退院後、トイレとお風呂、早朝の散歩以外は部屋から出ない「セルフロックダウン」をしている間、食事を運んで片づけてくれたり。僕自身も変わりました。もともと準備魔というか、5でいいところを10も15も調べるタイプ。でも退院してからは、5で「まあいいか」と思えるようになった。
茅原:もともと仕事にまっしぐらな人。「これだ」と思ったらそれしか道はないと思って走ってしまうけれど、実は右にも左にも道はある。年齢を重ねればなおさら、周りへの影響や優しさを考えながら走らなくてはいけない。がんはそういうことに気づかせてくれたのかなと。退院直後は、「変わったかな」と思いましたけど、最近はまた……。
笠井:え? 僕変わってない?
茅原:変わったとは思うんだけれど、もうちょっと期待しています!(笑)
笠井:喉元過ぎれば……にならないようにしなきゃね!
(構成/編集部・小長光哲郎)
※AERA 2021年2月8日号