森会長の釈明会見に先立ち、JOC理事でソウル五輪柔道女子銅メダリストの山口香さん(筑波大教授)はマスコミ各社の取材に4日、応じた。山口さんは「森さんは立場上、オリンピック・パラリンピックを招致したホストとしての責任感を持っている」と開催への熱意は認めつつ、「一方で、(多様性や男女平等という)五輪の理念や精神にも同じ責任を担っている」と指摘。森会長の発言については残念に感じているという。
「(一般論として)欧米に比べてジェンダーバイアスが日本には強く残っている。(そういう状況で)立場のある人がこうした発言をすると、個人の意見を超えて、世界からはその国の人の意見、つまり日本人がそう思っていると誤解をして受け止められてしまいます」
世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数で、日本は153か国中121位。社会においても、現場では女性の活躍しているものの、組織の意思決定の場になると女性が少ないという認識だ。企業活動に限ったことではなく、スポーツの世界も例外ではない。女性アスリートの数は多く、活躍する環境が整っているが、役職がつく重要なポジションとなるとまだまだ世界標準とはいえない。JOCは女性の理事の割合を40%以上を目標とすることを掲げている。
山口さんによると「せっかく女性をスポーツ団体の理事にしたが発言が少ない」という苦言ももらったこともあり、役員に選出された女性には活発な議論を推奨してきたという。そんな中での、森会長の発言。されに、それに同調するような笑いがあったことは、女性が発言を躊躇することにつながるのではないか。そのことを山口さんにたずねると、次のように答えた。
「女性に限らず、日本は会議の場では、忖度(が働く)というか、心の中では『どうかな』と感じていても、意思を明確にする勇気がないというか、むずかしいのが現状です。その現状下で、会議に女性の割合が少ないのはどういうことか、考えてみてほしい。(忖度が働く)空気感があるから、女性がなかなか発言できないという背景もあると思います」
ジェンダー研究の第一人者、社会学者の上野千鶴子さんは今回の発言について、どのように感じたのだろうか。