「森会長の発言は、女性の意見表明を抑圧する効果があります。余計なことを言わずに黙ってろと同じ」(上野さん)
上野さんによると、意思決定の場で女性の数が多くなると、森会長のいうように「会議は時間がかかる」のは事実だという。それは「出来レース」にせず、議論を活発にしているという証。例えば地方議会で女性議員が増えると議論は活性化する傾向があり、そもそも嘆かわしい事態ではなく「ポジティブなこと」(上野さん)なのだという。
「上位者の意向を忖度するだけなら、意思決定に関わる場に女がいくらいてもただの『壁の花』。女性が入って、会議が活性化するのはいいことでしょう」(同)
つまり、そもそもの森会長の認識が誤っているのだ。それに「女性は競争心が強い」は「偏見に満ちたミソジニー発言」(同)だとも。
また、森会長の発言に対して会議の出席者から笑いが上がったことに対しては、「性差別を再生産している」と上野さんは指摘する。
「差別発言に対し、沈黙したら見逃したということ。笑ったら同調したということ。つまり、性差別を再生産する共犯者になります」(上野さん)
とはいえ、国内外から批判されるような事態に対して、なかなか関係者が声を上げにくいのはなぜか。JOC理事の山口さんは取材に応じて見解を述べたものの、著名な元アスリートに取材をお願いすると「立場があるのでコメントは控えたい」という人もいた。
「オリンピックには利権が絡んでいますから、スポーツ界のひとは本音を発言したくても難しいでしょう」(上野さん)
ちなみに山口さんは、2013年に社会に明るみになった柔道女子選手に対する暴行・パワハラ問題で告発した選手を支援してきた。
今回の問題で、さらに逆風にさらされている東京五輪・パラリンピック。いったいどんな形で決着するのか。世界が注目している。(AERAdot.編集部/鎌田倫子)