大西:共演者の音をしっかり聴いて、リスペクトを込めて自分の音を出すところは、ボサノヴァもジャズも同じですね。

坂本:リサさんは、アントニオ・カルロス・ジョビンの息子でギタリストのパウロ・ジョビンや、孫でピアニストのダニエル・ジョビンとも共演されていますね。

小野:1998年のボサノヴァ誕生40周年を記念したアルバム「BOSSA CARIOCA」で、お二人とご一緒しました。パウロがポロンとギターを奏でるだけで、あるいはダニエルが鍵盤を叩くだけで、ジョビンの音楽の世界に入ってしまうという貴重な体験をさせていただきましたね。

坂本:私はジョビンのバンドにいたチェリストのジャキス・モレレンバウムにお目にかかったことがあります。父(坂本龍一)がリオデジャネイロのジョビンの家でジョビンのピアノで、ジャキスと、夫人のパウラと3人でレコーディングしたんです。2001年の「CASA」というアルバムで、私のボサノヴァとの出合いになりました。

小野:ボサノヴァとの出合いはジョビンの作品だったわけですね。

坂本:10代で、父を通して、ボサノヴァを知り、ジョビンを知りました。その後、父にジョビンの伝記『アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男』を借りたんです。妹さんのエレーナ・ジョビンの著ですが、その中でジョビンは、音楽は世の人々の役に立つべきものだ、ということを話しています。とても説得力があって、ずっとリスペクトしているんです。

大西:ジョビンが言うように、コロナ禍が続く2021年にやる私たちのJAMも、多くの人の役に立つといいですね。

坂本:JAMの開催に先立ち、春樹さんは「なにが世界を救うだろう?」というメッセージを発しています。医療従事者のかたがたをはじめ、エッセンシャルワーカーの皆さんに私たちは救われているわけですが、音楽も多くの人の“心”の救いになるかもしれません。

小野:私は演奏する側ですが、リスナーとしても、音楽の響き、余韻にいつも心が満たされることを実感しています。

大西:ステイホームの時期、一人部屋にいる時間も、ラジオやCDで音楽が鳴っていると、孤独を感じることなく過ごすことはできました。

(構成/神舘和典)

週刊朝日  2021年2月12日号より抜粋