世襲打破を掲げてきた菅首相の長男が、総務省幹部への接待で暗躍していた。息子を議員にしなければそれでいいのか。「平民宰相」の看板が揺らぐ。AERA 2021年2月15日号から。
【写真】菅首相が頼りにしていたが失脚した「官邸の守護神」はこの人
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有権者からすれば「ブルータス、お前もか!」の心境ではないか。さんざん「叩き上げ」「世襲打破」「苦労人」を前面に押し出し、安倍晋三、麻生太郎両氏ら世襲族の元首相とは違うことを売りにしてきた菅義偉首相。そんな首相を直撃したのが、長男の菅正剛氏が現職の総務省高級官僚らを接待していたという週刊文春のスクープだ。
■総務省の大臣秘書官に
事のあらましはこうだ。昨年10月7日、現場は日本橋人形町にある高級料亭。映像制作、キャラクターライセンスなどの事業を手がける「東北新社」の二宮清隆社長らが、総務省内で「次の事務次官」の呼び声が高い谷脇康彦総務審議官に対して、数万円する食事代を支払い、タクシーチケットを渡すなど違法の疑いがある接待をしたという。
同席していた正剛氏は、同社の趣味・エンタメコミュニティ統括部長の肩書を持つ。東京都港区赤坂に本社を構える同社のグループ売上高は650億円。社員数は890人。その基幹事業のひとつが「衛星放送事業」だ。
総務省は、電波法に基づき放送の許認可を行う。その事務次官候補が、衛星放送を手がける会社の社長らから接待を受けたのが事実であれば、明らかな国家公務員倫理規程違反にあたり、懲戒処分の対象となる。
元総務官僚は正剛氏についてこう話す。
「安倍第1次内閣で総務大臣として初入閣した菅さんが、息子の正剛氏を大臣秘書官に抜擢したのは省内では有名です。そもそも政治とは無縁のミュージシャンを志していたという若者を大臣秘書官という要職で登用し、彼は霞が関の中枢を闊歩するようになった。東北新社という会社は、世間的には名の知れた企業ではありませんが、菅ジュニアがいる会社として、省内では知る人ぞ知る企業でした」