オーストラリアのKaren氏らは、HPVワクチン接種・検診・治療の普及を達成すれば低所得国や中所得国では、今後100年で子宮頸がんによる死亡はほぼ消失するといいます。しかしながら、日本はというと、HPVワクチンの接種のみならず、子宮頸がんの検診率は半数にも達していません。子宮頸がんの検診率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国30カ国の中で最低レベルです。HPVワクチン接種や検診が普及しているとは言えない日本では、子宮頸がんに罹患する女性が増加すら示唆されているというわけなのです。

 4価HPV ワクチンは定期接種(小学校6年生から高校1年生相当の女子が該当)の対象でしたが、昨年12月25日、4価HPV ワクチンの男性への接種と肛門がんへの適応拡大が承認されています。しかしながら男性への接種は任意接種のため、全額自費負担です。国産の9価HPV ワクチンも現時点では定期接種の対象ではなく、価格もまだ公表されていません。海外の多くの国で接種されている9価HPV ワクチンは輸入ワクチンの扱いのため、標準の接種回数である3回の接種をするとなると、費用は10万円前後となっているのが現状です。国産の9価HPV ワクチンを接種するのに、果たしていくらかかるのか、とても気になるところです。

 (※1)https://www.msdconnect.jp/products/gardasil-silgard9/gl_hpv_vaccine.xhtml

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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