■年齢による解釈も必要

 イレブンチェックは「栄養」「口腔(こうくう)」「運動」「社会性・こころ」というフレイルにつながる4大要素を総合評価する計11の質問リストだ。

「フレイルは身体的要素だけでなく、メンタルや社会性など精神的要素も含め多面的に底上げを図る心掛けを持たなければ予防できません」(同)

 イレブンチェックは質問ごとに「はい」と「いいえ」が赤または青の枠で囲われている。青枠の回答が多いほどフレイルのリスクは低いとされる。

 ただ、高齢者以外の世代が参考にする場合、一部の質問は捉え直しが必要だ。例えば、「栄養」に関する「野菜料理と主菜(肉または魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか」という質問。ここでは、高齢者に不足しがちな肉や魚に含まれるたんぱく質の摂取が1日に必要な量に達していない人を対象に、摂取量アップを促すメッセージが込められている。

 だがこれを、メタボ予防に努めるべき中年世代に当てはめられないのは明白だ。世代を問わず共通して求められるポイントは「食事の栄養バランス」であることに留意し、「野菜料理と主菜(肉または魚)を両方ともバランスよく食べていますか」と質問を柔軟に解釈する必要がある。

「口腔」に関する、「『さきいか』『たくあん』くらいの硬さの食品を普通に噛み切れますか」という質問も、高齢者以外の世代に当てはめようとすると無理が生じる。肝心なのは、質問の意図をどう読み取るかだ。飯島教授は「いずれは硬い食材が噛み切れなくなる世代に入っていく。だから今のうちに、噛み応えのある食材を積極的に選んでしっかり噛んで食べる習慣をつけておかないといけない、という認識に捉え直す必要があります」と話す。

 サルコペニアも、口腔にダメージを与える歯周病も、働き盛り世代に少なくない。しかし、痛みを感じる疾患ではないため軽視されがちで、メンテナンスを怠る人も多い。飯島教授はフレイルにつながる「栄養」「口腔」「運動」「社会性・こころ」の4要素を健全に保つのに必要なのは、詰まるところ「自己管理能力」だと強調する。

「コロナ禍の運動不足で『コロナ太り』になる人もいますが、自分にムチを打てるかどうかは自分次第です。テレワークが推奨されても時間を見つけて運動しようとするか、個々の意識が問われています」

 外出や対面の機会が減るコロナ禍で、メンタルのバランスを崩す人も少なくない。経済や雇用の不安定さが増す中、将来に不安を覚える人も多いはずだ。

「そんな息苦しい世の中で心の安寧をいかにして保つか、内面のセルフコントロール術も問われています」(飯島教授)

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