超低金利でお金の有利な預け先を見つけにくくなっている。といって、銀行の普通預金に大金をため込んでいたりすると、オレオレ詐欺や怪しい訪問販売などで思わぬ被害に遭いかねない。高齢になるほど狙われやすい。新型コロナウイルス下の巣ごもりを利用し、お金の預け方の“たな卸し”をしてみてはどうだろう。
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何げなく覗(のぞ)いた老母の机の引き出し。中にあったのは、同じ工事業者が発行する領収証だった。全部で7枚。日付はここ1年余りのもので、金額欄には「380万円」「50万円」など高額の数字が並んでいた……。
「本当に驚きました。まさか自分の親が……という衝撃です」
こう話すのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の北見久美子さん。長年、消費生活アドバイザーを務めるなど消費者問題に詳しい。
北見さんは10年ほど前、故郷で一人暮らしをしていた母が、「押しかけ工事」の被害に遭っていたことを帰省したときに知った。軽い認知症の症状が出始めて、ほどなくしたころだったという。
「『屋根の修理をした』などと母は言っていましたが、工事を始めた理由や業者とどんな話をしたのかなどは、全然覚えていませんでした。次々と契約させるところから『次々販売』と言われていますが、業者としては覚えていないのが狙い目だったのでしょう」
この経験がきっかけとなって、北見さんは高齢者がこうした被害に遭わないようにするにはどうしたらいいかをあれこれ調べ、『親のお金の守り方』という本を書いた。しかし、その後も高齢者の消費被害は増えるばかり。そして気づいた。
親の世代を「反面教師」に、これから老いてゆく自分たちこそが「お金の守り方」を実践していくべきではないか、と。
「とくに認知症の親を見てきた人は、誰しもそういう思いを持っているはずです」(北見さん)
まさに、「人のふり見てわがふり直せ」ならぬ「『親』のふり見て……」だ。さっそく、北見流の「お金の守り方」を教えてもらおう。
まずは、いつから始めればいいか。「まだまだ若い」「自分で何でもできる」と思いがちだが、頭や体が衰えてからでは手遅れになる。