個人向け国債は、個人に国債を買ってもらうために国がつくった金融商品。1万円以上1万円単位で買えて、1年経過すれば換金できる。中途換金すると、すでに支払われた利子2回分(税金分除く)が差し引かれるが、元本割れはしない。
「利回りも最低保証の0.05%はつきますから、銀行の普通預金より高い。固定金利型と変動金利型がありますが、金融情勢に応じて利回りが変わる変動型がいいでしょう」(同)
信託銀行を使う手もある。
「信託銀行は高齢社会に合った様々な商品を出しています。お金を信託しておけば、定期的に自分の口座に定額を振り込んでくれる年金のような機能の商品もあります。これだと余計なことは一切考えずに済む」(同)
確かに、高齢になると必要なお金と少しの“プラスアルファ”以外は手元に置かないのが賢いマネー術とされるが、そうした手法に合うやり方だ。
では、証券会社と付き合ったことのある人は何がいいのか。
「ちょっと上級者向けですが、普通は投資資金の待機場所として使われる『MRF』を銀行の普通預金のように使うのがおすすめです」(同)
MRFは「マネー・リザーブ・ファンド」の略。投資信託の一種だが、元本割れの恐れはほぼない。銀行の普通預金と同様、キャッシュカードでお金を引き出せる。証券会社のATMだけでなく、提携銀行のATMも使える。「MRFのいいところは、他人の口座に振り込めないことにあります。送金できるのは、登録した自分の口座のみです。大手証券のネット専門の口座にしておけば、投資を勧める電話もかかってこないので安心です」(同)
ただし、子どもへの相続を含む「終活」を考えると、すべてがインターネットで完結してしまう取引はあまり増やさないほうがいいという。預けたところがわからなくなってしまうと、家族に引き継げなくなるからだ。
資産を1カ所に集中させない「分散」は大事だが、むやみに預け場所を増やすのも得策ではないだろう。いずれにせよ、こうした手法を組み合わせれば“ひと手間かかる”お金を増やせそうだ。北見さんは言う。
「老後全体を考えたライフプランを作って、住宅リフォームなど大きなお金がかかるイベントを把握してください。その上で、イベントごとに必要なお金を別分けにして“ひと手間かかる”ようにしておけばいいのです」
備えあれば憂いなし。巣ごもりを利用して、お金の預け方を再点検してみてはいかがか。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2021年2月19日号