進行すると手足の切断を余儀なくされる「バージャー病」。原因不明の難病として国の特定疾患に指定されています。この病気はたばこを吸っている人に多いことが知られていますが、歯周病も関与しているという話を聞きました。これは本当なのでしょうか? そもそもバージャー病とはどんな病気なのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師にうかがいました。
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「バージャー病」という病名を初めて聞く人も多いでしょう。この病気はLeo Buergerによって初めて報告された病気で、「閉塞性血栓血管炎 」(Thromboangiitis obliterans、TAO)とも呼ばれています。20~40代の男性に多く、男女比は9対1。原因不明の難病として国の特定疾患に指定されています。
バージャー病になると大変です。手足の動脈が狭くなり、閉塞が強い場所では血流が不足して組織に酸素がいきわたらなくなるため、痛みやしびれ、冷感などが起こってきます。さまざまな治療をしても完治は難しく、たびたび、再発を繰り返すのも特徴です。さらに進行すると潰瘍(かいよう)や壊死(えし)が起こるため、手足を切断しなければならないこともあります(最近はこうした重症例は減ってきたそうですが)。
この病気にはさまざまな要因がかかわっていて、このうち最も明確になっているのが喫煙です。病気の発症や増悪と喫煙は密接に関係しており、 患者のほとんどが喫煙者です。そして喫煙を継続している場合はどんな治療も無効だとされています。
さらにこのバージャー病に歯周病が関与していることがわかっています。
バージャー病研究の専門家である血管外科の岩井武尚教授(現・認定NPO法人バージャー病研究所所長)と歯周病学分野の石川烈教授(現・東京医科歯科大学名誉教授)が中心となっておこなった調査(2005年に発表)でこのことを明らかにしています。