接種が自由なのであれば、政府は、ワクチンのタイプによる違いを治験結果も含めて詳しく開示し、それを踏まえて国民がワクチンのタイプを選べるようにすべきだ。
最近「日本の医薬品行政」への信頼を大きく損ねる事件が起きた。爪水虫の治療薬に睡眠導入剤成分を混入させて死者を出した小林化工というオリックスの子会社は、延べ約500品目中約8割の製品について虚偽の製造記録などの「二重帳簿」を作成し、一部の品質試験を40年以上前から行わずに結果を捏造していた。こんなトンデモない会社はお取り潰しかと思ったら、たったの4カ月弱の業務停止だけで営業を始めるという。厚生労働省の政治判断なのかどうかは不明だが、これでは、日本の医薬品は安全だとはとても思えない。
厚労省は、医薬品行政で国民の信頼を得られなければ、今後出てくる国内産のアストラゼネカのワクチンやワクチン行政そのものへの信頼に影響し、接種も進まないことを肝に銘じるべきだ。
※週刊朝日 2021年2月26日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など