対照的なのは、中国の小説投稿サイトだという。
「中国の投稿サイトで人気なのは、主人公が力を付け、最後は神を倒して自分が神になるといった作品。日本でも、高度成長期にもし投稿サイトがあったら、同じようにどんどん成り上がっていく話が人気だったのではないか」(前出の編集者)
■異世界で結ぶ絆に共感
もう一つ、今の世相との関連で見逃せないのが、「転生もの」の主人公の多くが、現世ではひとりぼっちなのとは対照的に、異世界では仲間をつくり、絆を実感することだ。
「心配してくれる人がいるというのは、それだけで嬉しいものなのだ」
『転スラ』の主人公で、モテないゼネコン社員から転生したリムルは、自身を本気で気遣ってくれる仲間のシュナとシオンを前にそうかみ締める。
人との接触を控えるよう求められ、リアルの人間関係を結びにくい今だからこそ、異世界で生まれる確かな絆に魅力を感じる人が多いのかもしれない。(ライター・老山菜綾)
※AERA 2021年2月22日号