AERA 2021年2月22日号より
AERA 2021年2月22日号より
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 小説投稿サイト「小説家になろう」が熱い。作品が次々に書籍化されアニメや映画も大ヒット。そこには現代日本のリアルな空気感が映る。AERA 2021年2月22日号から。

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 映画が大ヒットし「キミスイ現象」という言葉も生んだ『君の膵臓をたべたい』、ゲームやパチスロにとどまらず今シーズンはプロ野球ともコラボする『Re:ゼロから始める異世界生活(リゼロ)』、シリーズ累計発行部数が2千万部を超える『転生したらスライムだった件(転スラ)』──。いずれも、小説を自由に投稿できるサイト「小説家になろう」から生まれ、映像化されたヒット作品だ。

■投稿作品は78万本以上

 同サイトからはほかにも『本好きの下剋上』や『無職転生~異世界行ったら本気だす~』など、累計販売が数百万部規模の作品が続々と誕生。これらの作品は「なろう系小説」と呼ばれ、ここ数年の出版界で一大ジャンルとなっている。

 サイトを運営するヒナプロジェクト(大阪府枚方市)によると、サイトから7千冊以上が書籍化され、アニメ化も30作品以上に上る。サイトには78万以上の作品が投稿され、フェイスブックやインスタグラムを上回る月間約20億PV。利用者は10代が10%、20代が約41%、30代が27%、40代が14%と幅広い。同社は、人気の秘密をこうみる。

「利用者の数が多いことが最大の長所であり、多数の作品が生まれている理由と考えています。投稿作品が多くの方に読まれることが作者のモチベーションとなり、人気が出た作品は多くの人の目を通ってきたことで書籍化後も人気につながりやすい状況が出来ているのだと思います」

 なろう系小説の特徴は、「異世界転生もの」と言われるストーリー展開だ。多くの作品で、主人公が交通事故にあうなどして別の世界に生まれ変わる。生まれ変わった世界は「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」のようにどこか中世の西洋風で、城があり、悪の魔王やドラゴンがおり、勇者が剣や魔法を使って立ち向かうという設定が典型的だ。

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