コロナ禍で自宅で学べる手段として、ビジネス書の売り上げが好調だ。要約サービスは「何を読めばいいかわからない」という悩みに答えてくれる(撮影/写真部・張溢文)
コロナ禍で自宅で学べる手段として、ビジネス書の売り上げが好調だ。要約サービスは「何を読めばいいかわからない」という悩みに答えてくれる(撮影/写真部・張溢文)

 一冊の本の要点をまとめて提供する「要約サービス」が隆盛の兆しを見せている。読みたい本に効率良く出合うだけでなく、思いがけない本との出合いもサポートする。AERA 2021年2月22日号から。

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 都内メーカーに勤務する岡谷憲二さん(42)は、コロナ禍で在宅勤務が増え、朝6時に起床して散歩に出ることを日課にしている。散歩中、スマホのイヤホンを通して聞くのはビジネス書の要約だ。1年ほど前、会社がサービスを導入した。岡谷さんは言う。

「本を読みたくても時間がとれなかったり、一冊読み切れなかったりすることが多かったので、使い始めました。コロナの前は就寝前など、隙間時間にテキストで読んでいました」

■1冊10分で読める

 要約サービスを使い始めて、読書が変わった。以前は本を買うと、読了しなければという思いが強く、読み終えても何も残らないこともあった。だが、今は予(あらかじ)め全体像がつかめている分、気楽になり、必要と思える文章により出合えるようになった。

 岡谷さんが利用している要約サービスは、「1冊当たり10分で読める」という「フライヤー」だ。累計会員数は75万人。ここ数年、ビジネスパーソンに向けた、本の要約サービスが広がりを見せている。コロナ禍で対面の研修が難しいなか、学びの代替策として導入する企業も出ている。

 フライヤーの創業は2013年だが、原点には前職でコンサルタントだった大賀康史CEO(42)の原体験がある。仕事柄、多くの本を読む必要があったが、本の帯やネット書店の内容紹介を参考に購入しても、「思っていたのと違った」というミスマッチが少なくなかった。読みたい本に高い精度で、効率良く到達する手段が必要と考えた。同社執行役員でプロモーション担当の井手琢人さん(39)は言う。

「要約サービスは、デパ地下の試食のようなものです。試食してから買えば大きなハズレはない。ネット版の立ち読みサービスともいえます」

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