東京で離れて暮らす元夫と娘の面会交流も今では宿泊付きとなり、元夫とは直接LINEでやりとりする。娘と元夫が会っている間、築城さんは自分のために時間を使えるようになり、仕事も順調にまわりだした。元夫への憎しみ、怒りは自然とはがれ、「自分自身非常に楽になった」という。養育費も途絶えることなく続いている。

「苦しんでいた時を知るママ友に会うと、『別人だ』と言われますし、面会交流をやめていたら今の私はなかった。面会交流は10年後、20年後の子どもの成長を父母が見守っていくことに必要なこと。だから面会交流や共同養育は大切なのだと。そのことを知っていれば、自分も最初から違っていたはず」。そう痛感する築城さんは2019年にNPO法人「ハッピーシェアリング」を設立。面会交流支援や離婚後の親としての心構えを学ぶ講座などに力を入れている。

「お母さん一人で仕事して、育児して、子どもを養わなくてはいけないという社会構造ができあがっていることも問題で、これはしんどく、貧困に陥ったり子どもがほったらかしになって非行に走ったりなどいろんなことに関わってくると思います。離婚後もお父さんも子育てに関わって、お母さんの負担を解消していくことが社会的文化として当たり前になることも望んでいます」

 共同養育を円滑に進め、子どもが安心して育つためには「制度としての共同親権が欠かせない」と強く訴えるシングルマザーもいる。

「離婚届にサインをする時、親権は1人しか持てないことを知って衝撃でした」。そう語るのは東京都在住のA子さん(40代)だ。「『単独親権』って、片方の親の、子どもを養育する義務の放棄じゃないですか。そんな不安定な状態に子どもを置くことを国が強いるなんてありえない」と憤る。

 離婚原因は元夫の不倫。元夫から申し立てられた調停は長引き、その間娘(当時10歳)から父を奪ってしまっていいのか悩み続けた。元夫は娘を非常にかわいがり、娘も父を大好きなことはよく分かっていた。仕事が多忙なA子さんには育児を一人で担うことへの戸惑いもあった。

 そんななか、「共同養育」の存在を知る。目の前の霧が晴れた瞬間だった。「別れても2人で娘を育てられるんだ」。「羽が生えたように心が軽く」なり、調停もスムーズに。和解調書では共同養育を行うことを明記し、3年半前に離婚が成立した。だがそこで再びショックを受けたのが、親権者を1人に選ばなくてはならない離婚届だった。A子さんが親権を持つことになったものの「なぜ1人に絞らなくてはならないのか」と今も納得できていない。

 現在、中学2年生になる娘と元夫は自由に会い、今も非常に仲が良い。娘が元夫宅に行っている間、A子さんは仕事をしたり、趣味に時間を費やしたりと大切な息抜きの時間になっている。

「『親権』は『子どもを養育する親の義務』のこと。単独親権のままでは法的な縛りがなく、親権を持たない親は嫌になったら逃げることができてしまう。不利益をこうむるのは子どもです」とA子さん。DV被害者保護等の観点から共同親権の導入には慎重論が根強いことについて、「DVを受けた人たちも安心できるように制度を整え、そうしたケースは単独親権も選べるようにしつつ原則共同親権にしていくことが大切だと思う」。シングルマザーとして、共同親権を求める活動にも積極的に参加している。

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