辞任した森前会長の後任は、森氏の「政界の娘」を自認する橋本聖子氏に決まった。自身のスキャンダルもちらつく中、立ち向かう課題はあまりにも大きい。AERA 2021年3月1日号では、橋本氏に迫られる「二つの決断」を取り上げた。
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「大変大きな重責を担わせていただくことになりました。身の引き締まる思いであります」
2月18日に開かれた東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の理事会。森喜朗前会長(83)の女性蔑視発言に端を発した後任会長人事は、五輪担当相の橋本聖子氏(56)の就任が正式に決定し、本人がこのようにあいさつした。
選考過程や、指摘されている官邸による介入など後に検証すべき事柄も残ったが、今は橋本氏をトップに東京大会の運営に走り出さざるを得ないだろう。
まずは、橋本氏の経歴をあらためて紹介したい。
北海道出身。東京五輪があった1964年に生まれ、「聖火」から名付けられた。スピードスケートの選手としては4回の冬季五輪を経験し、自転車競技でも3回の夏季五輪に出場。92年のアルベールビル五輪では銅メダルを獲得し、冬季五輪で日本女性初のメダリストとなった。
参議院議員となったのは95年。自民党幹事長だった森氏の導きで政界進出し、当初は批判もある中で選手との二足のわらじを履き、現職議員としてアトランタ五輪にも出場した。党参院議員会長などを経て、2019年9月に五輪担当相となった。
■迫られる「二つの判断」
森氏の後任に橋本氏が就くのも因縁を感じるが、その橋本氏もすねにキズを持つ。フィギュアスケートの高橋大輔選手に無理やりキスしたと14年に週刊誌で報道された疑惑だ。事実であれば、ジェンダー意識どころか刑事事件の可能性すらある一件だが、当事者らが「強制」ではないと否定している。今回、国内外のメディアがあらためて関心を持って報じている。
今後、橋本氏が大会運営で直面することになる課題は何だろうか。元都職員で、東京五輪招致推進担当課長だった鈴木知幸・国士舘大学客員教授によれば、現状では重要な判断が二つ残されているという。