一つは、競技場の観客をどうするかだ。無観客についての世論や関係者の賛否はなお割れている。そして二つ目が、中止の判断だ。鈴木教授は、その判断があるとすれば、聖火リレーが始まる3月下旬とみている。基本的には国際オリンピック委員会(IOC)が決めるものだが、日本側に判断を委ねる可能性が高いという。こう説明する。
「どのように開催できるかを検討する余地があるのにIOCが独断で中止を決めることはないでしょう。中止なら日本側から提案してくることを待つはずです。これは、1年前に延期を決めたときとまったく一緒です」
これらの判断はもちろん国や東京都との協議を経てということだが、橋本氏も重責を担うことには間違いなさそうだ。
そして、鈴木教授が橋本氏個人に期待される「最大の役割」と指摘するのは、国民の東京大会への“支持率”を上げることだ。朝日新聞やNHKなど開催賛成が10%台となった世論調査もある。鈴木教授はすでに赤信号がともる状態と考える。
「これほど支持の集まらない大会は、過去にありません。森氏の傀儡だとも見られている橋本氏にとっては、非常に厳しい状況であることに間違いはないでしょう」
一方、森氏が依然として影響力を発揮し続けるのではないかという考え方について、スポーツライターの小林信也さんは「森氏の影をどうのこうの言うのは筋違いではないか」と疑問を呈する。
「みなさん、何かに毒されているのでしょうか。政治の世界の裏表をすべて投影しようとしているようですが、これは五輪・パラリンピックの制作運営現場です。国民が納得する形で開催できるかどうかというのが、何より大切でしょう」
※【橋本聖子新体制で浮かび上がった「森vs.菅」の対立 首相が「川淵氏へ禅譲」に激怒した理由】へ続く
(編集部・小田健司、中原一歩)
※AERA 2021年3月1日号より抜粋