国会では菅義偉総理の長男菅正剛氏による総務省幹部接待疑惑の追及が続いている。長男が勤める東北新社の関連会社が放送法の許認可事業を行っているにもかかわらず、その所管省である総務省の幹部が何回も長男の接待を受けていたというのだから、疑われて当然。霞が関の官僚たちも「これは相当ヤバい」と見ているだろう。私がこの話を聞いた時の感想も、「まるで昭和の接待」だ。
当時は、盆暮れの付け届けやゴルフ接待、さらには視察と称した温泉旅行まであった。平成に入ってもノーパンしゃぶしゃぶ事件などの官僚の接待不祥事が続いたが、それががらりと変わったのが、2000年頃。国家公務員倫理法施行もあり、企業訪問の際に出されたお茶を飲んでいいのかと議論されるほど、一時は官僚たちも襟を正した。
ところが、徐々に官僚や企業の意識も緩み、とりわけ、安倍晋三政権になると官僚の倫理観は極端に劣化した。国家戦略特区の規制緩和で獣医学部を新設しようとする加計学園のトップと直接の責任大臣である安倍総理自身が一緒にゴルフや宴会を繰り返し、官邸官僚のトップである総理秘書官までお相伴にあずかっていたのに、安倍総理が「問題なし」と言い張ったのである。官僚たちは、「へえ、そうなんだ」と思ったのだろう。
今回の接待ではお互いに贈収賄の意図があったと見るのが自然だが、一方で、この程度のことで贈収賄の立件をするのは極めて難しい。世論の手前、無罪放免とはいかないので、新事実が出てこない限り、立件のハードルが低く罰則もはるかに軽い国家公務員倫理規程違反で処分して終わりという可能性が高い。
それにしても、彼らがこんなに危ないとわかり切った接待を受けたのはなぜだろう。菅氏は、意に沿わない官僚を左遷すると公言した。その怖さを一番よくわかっているのが総務官僚だ。菅氏が何の実績もない長男を大臣秘書官にするほど溺愛していることも知っている。菅氏の長男の機嫌を損ねると大変だし、逆に覚えめでたくなれば引き立ててもらえるという心理が働いた可能性は高い。