その後、年をとりナイス・エイジングのステージに入ったら、どうなのでしょうか。老いるということは、昨日できたことが、今日はできないということです。
そこから再び他力の世界が開けてくるのではないでしょうか。老いて死ぬという絶対的な必然から、逃れられないことをひしひしと感じる年代です。年相応に、無理をしないでやれることをやるしかありません。自力だけでずっとやっていけるとは、とても思えなくなってくるのです。
しかし、そのときに他力だけに流れてしまってはいけないと私は思っています。それは、私が提唱する“攻めの養生”に反しています。
攻めの養生では、生命のエネルギーを日々、高め続けて、死ぬ日に最高に持っていくのです。生命のエネルギーを高めるには、生命を躍動させなければいけません。その躍動はこころのときめきから生まれます。こころをときめかせるのは、まさに自力です。
自力によって、生命のエネルギーを高め続け、最後は死の世界、つまり虚空に身をゆだねるのです。つまり最後は、自力と他力が一体になります。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年3月5日号