1. 目のこすりすぎ


 原因でまず一番多いのは目のこすり過ぎではないでしょうか。花粉症で起きた目のかゆみを、手でゴシゴシこすってしまう。まぶたのあたりまでかゆくなって爪を立ててかきむしってしまう。そうなると当然、炎症は目の結膜だけでなく、周辺の皮膚に波及します。

 皮膚が赤くなるだけであれば、花粉症の時期がすぎれば改善します。しかし、目のこすり過ぎは白内障や網膜剥離を引き起こし、最悪の場合は失明にいたります。そのため十分な注意が必要です。ちなみに私は小さな頃からのアレルギー性結膜炎で目をこすりすぎたため、軽い白内障と網膜剥離があり定期的に眼科通院中です。

2. 花粉アレルゲンによる直接の反応
 スギ花粉でアレルギー反応が起きる人は、花粉の成分に含まれるCryj1とCryj2が主なアレルゲンと考えられています。これら花粉のアレルゲンはタンパク分解酵素活性を持っており、大量に付着するとバリアー機能を破壊することが試験管レベルの研究で報告されています(文末に参考文献)。この研究は犬の腎臓細胞を用いた実験ではありますが、花粉が破壊するバリアー機能に関係する分子は人の皮膚でも共通しており、スギ花粉が皮膚に多く付着すると皮膚の炎症を起こす可能性があります。花粉が多く飛んでいる日に外出した場合、帰宅後に全身をさっとシャワーで洗い流すことを私はおすすめしています。またシャワーができない状況では、ぬれタオルで押しつけるように優しく拭き取ることも有効ではないかと思います。

3. 目薬、化粧品に対するかぶれ
 忘れてはいけないのは、花粉以外で起きる皮膚のトラブルです。たまたま花粉症の時期に重なって症状が出現しただけで、目の周りのかゆみはほかの原因の場合もあります。一番多いのは、目薬によるかぶれ。新しく目薬を使い始めた時期と目の周りのかゆみが出現した時期が一致していませんか? 目薬のかぶれは、その目薬を使い続けている限り症状が続きます。体が慣れてかぶれが治ることはまずありませんので、市販の目薬の場合は中止し、病院で処方されている場合は勝手にやめず主治医に相談することが大事です。

 また、化粧品、洗顔料での顔のかゆみも見落としてはいけません。ついつい花粉症の時期に重なってしまうと、すべての症状を花粉症で説明してしまいがちです。皮膚のトラブルは花粉症以外でも起きることを忘れてはいけません。

まとめ

 今回は花粉症で起きる皮膚のトラブルについて、考えられる原因とその対策についてまとめてみました。症状が長引いたり、日に日に悪化する場合は安易な自己診断をせず、しっかりと専門医に受診することをおすすめします。インターネットで「アレルギー専門医」と検索すればお近くの専門医が見つかると思います。

参考文献:Respirology. 2007 Nov;12(6):834-42.

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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