演技に監督に、そしてピアノと、その多才ぶりには目を見張るものがあるが、女性誌のインタビューで「自身の強み」を聞かれた際、「映像についての理解が圧倒的に同世代の役者よりも深いところ」と答えている(「VOGUE GIRL」・2019年8月30日配信)。頭でっかちなくらい知識に寄った自分がいると客観視し、逆にウィークポイントは「もっと感情で出てくるものでお芝居できたらいい」という課題も語っていた。また、役をもらった際に、その役の人生は物語の最初から最後、台本に書かれている部分しか描かれていないが、「その前を想像したり、書かれていない部分を想像する、考えてあげる」「役の人生に責任を持つ」ことが大事だと語っており、井之脇の真面目な性格がうかがえる。
■山田孝之のような俳優兼監督になるか
「山登りが好きというアクティブな一面も魅力的です。高校生のころ、お父様に富士山に連れて行かれ、キツかったけど、頂上での達成感を味わったときに登山にハマってしまったそうです。昨年出演したバラエティ番組では、『山に取り憑かれた俳優』として登場したこともあり、関東以北で最高峰の日光白根山(2578メートル)への登山にチャレンジしていました。一緒に登った登山初心者のディレクターへのやさしい気づかいや、道中に捨てられていたゴミの空き瓶を拾って持ち帰る姿など、ドラマなどでは見られない素顔が随所で見られ、新たなファンも増えたのではないでしょうか。日本百名山を制覇するのが夢だそうで、子どものように目を輝かせて山のお話をする姿が印象的でした」(同)
ドラマウォッチャーの中村裕一氏は、井之脇の魅力をこのように分析する。
「飾らない等身大の表情と演技が持ち味。フレッシュでハツラツとした後輩役を演じさせたら、同世代の俳優の中でもピカイチでしょう。なにより、これから先が楽しみな俳優であることは間違いありません。子役出身という視点から見れば、神木隆之介のようなポジションになるかもしれませんし、ボディコントロールという視点から見れば、鈴木亮平のような変幻自在の俳優になるかもしれません。さらに俳優兼映画監督という視点から見れば、将来的には山田孝之やオダギリジョーのような存在になる可能性もあります。今の彼はまさに無限のポテンシャルを秘めていると思うので、どのルートをたどるにせよ、彼のライフワークである山登りのように、コツコツと一歩一歩、踏みしめながらいろいろな役にチャレンジし、俳優としての高みに到達する姿を見たいですね」
2021年は映画「ザ・ファブル 第二章」や「砕け散るところを見せてあげる」、「Arc アーク」など多数の出演作の公開が控え、間違いなくさらなる飛躍の年となりそうだ。「25歳は20代の折り返し地点。これからは積極的に“アウトプット”しなければ…。主演、脇役問わずどんな役にも挑戦したい」(「zakzak」2020年12月9日配信)と本人も語るように、今年も井之脇の存在感ある演技を心待ちにしたい。(高梨歩)