若手人気お笑いコンビ「ニューヨーク」の公式YouTubeチャンネルで、2時間超の長さにもかかわらず118万回以上再生されている(2021年3月3日現在)異例の動画がある。昨年11月に公開されたドキュメンタリー作品「ザ・エレクトリカルパレーズ」だ。この作品がお笑いファン以外にも広がりを見せ、人々を魅了するのはなぜなのか。東京大学法科大学院在学中の芸人・構成作家で、YouTubeチャンネル「コンテンツ全部見東大生」で映画やドラマのレビュー動画を配信しているXXCLUBの大島育宙(やすおき)さんが解説する。
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今「エレパレ」が熱い。
吉本興業の芸人養成所「NSC」について、お笑い芸人の若手時代のエピソードで耳にしたことがある人は多いだろう。しかし、その内情はほとんど知られていない。ちょうど10年前に在籍し、1年だけ存在した「ザ・エレクトリカルパレーズ」という謎の集団に迫った2時間超のドキュメンタリー映画がなんと今、YouTubeで全編公開されている。
芸を学び、切磋琢磨するために多額の学費を納めて通う養成所。そこで彼らはいわゆる「スクールカーストの1軍」を形成し、ひんしゅくを買っていたという。芸での評価が比較的高く、容姿も良い男子のみで徒党を組み、自分たちのテーマソングやオリジナルTシャツ、さらには指で形づくる「エレパレポーズ」まで作るなど、「イタい」集団として揶揄されていた一方、芸人志望の女子生徒たちをグルーピーのように引き連れていたことから同期の妬みも買っていたらしい。しかし、養成所を卒業してプロの芸人としてデビューした途端に彼らは姿を消す――。
「M-1グランプリ」で2年連続決勝進出、「キングオブコント2020」で準優勝しブレーク中のコンビ「ニューヨーク」がその真相に迫った。彼らもNSC出身だが、入所は「エレパレ」の代の2期先輩。2020年2月、コンビのYouTubeチャンネルでの生配信中、ボケの嶋佐和也氏が突然「エレパレ」という言葉を口にする。面白半分でメンバーを特定しようと後輩たちに尋問したが、「エレパレ」と同期のはずの芸人は皆不自然に口をつぐんだ、とツッコミの屋敷裕政氏も話を広げる。その場で初耳だったらしい、チャンネルの構成作家・奥田泰氏が強く食いつき取材企画がスタートした。