ニューヨークの2人が後輩たちにインタビューする様子を奥田氏がスマホ1台で撮影し続け、9カ月かけて完成したのが「ザ・エレクトリカルパレーズ」という作品だ。公開から3カ月を待たずに100万再生突破。中之島映画祭、ATP賞テレビグランプリドキュメンタリー部門に出品が決定したほか、ギャラクシー賞へのエントリーも計画されている。
作中では「ザ・エレクトリカルパレーズ」と胸に書かれたおそろいのTシャツが発見され、背中にプリントされた名簿からメンバーの特定に至る。どっぷり内部にいたメンバー、嫌々参加させられたメンバー、メンバーだったか定かではないメンバー。彼らを疎ましく思っていた芸人らの証言も折り重なって、決して一枚岩ではなかった謎の軍団の姿が玉虫色に浮かび上がっていく。名のある同期芸人の一部が不自然に登場しなかったり、最後まで姿を見せない空虚な中心が残るなど、生々しくザラッとした後味が残る。
意外なことに、映画を見終えたお笑いファンの多くが元「エレパレ」メンバーに好意的になる。芸人を引退した者、裏方業に転向した者も多いなか、今も芸人を続けるメンバーが賞レースや大型ネタ番組で活躍すると、SNSのタイムラインや動画のコメント欄に「エレパレで好きになりました!」「エレパレから応援してます!」の文字が躍るのだ。
佐久間宣行氏(「ゴッドタン」などの番組を手掛けるテレビ東京プロデューサー)が自身のラジオ番組で「趣味で毎年つけている年間コンテンツランキングで劇場版『鬼滅の刃』と同率の30位」と漏らしたり、蔦谷好位置氏(音楽プロデューサー)も「2020は『鬼滅』か『エレパレ』」とエレパレメンバーが作詞作曲したオリジナルソングをラジオで流すなど、業界人も熱く反応した。
エレパレはなぜこんなにも見る者を魅了するのか。