■校則を支えるコスト
困窮家庭には自治体の就学援助があるが、全額はカバーしきれない。成長期の子どもはサイズアウトすることが多いが、買い替えは援助の対象外だ。
「経済的に余裕のある家庭は制服を買い替えたり、洗い替えを多く用意したりできます。同じ服だけに汚れや消耗の差はわかりやすく、制服はむしろ家庭の経済力の差が見えやすいと思います。経済的な配慮が目的なのであれば、制服は無償で現物支給すべきです」(同)
問題は、制服も校則も「所与のもの」として扱われ、生徒や教員、保護者など当事者が選んだり、合意のプロセスを経ていない点だ。多くの教員は異動した学校の制服や校則を「そういうもの」として受け入れ、生徒や保護者も、公立の小中学校であれば選択肢がない。
「一方、その制服や校則を成立させるためには非常なコストがかかっています。その点がこれまで見落とされてきました。一見、ささいに見える校則の違いが家計に影響します」(同)
例えば、靴下の色の指定が白なのか黒なのかによって、コストは変わる。汚れの目立ちやすい白では頻繁に買い替えが必要だ。靴下のワンポイント指定の有無も大きい。学校の指定品では1足千円するものも。福嶋さんは次のように話す。
「下着の色を白と指定している学校もあります。生徒への検査自体が人権侵害ですが、下着の好みは人によって違う。白が好きでない子は、学校用の下着をわざわざ買わないといけません。それほどのコストをかけてまで、その校則は維持しないといけないものでしょうか? コストが適正か、保護者も交えた校則の定期的な見直しが不可欠です」
■学校運営に生徒参加を
1月28日、若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」は、文科省に校則についての提言書を提出。「校則の改正プロセス明文化」「学校運営への生徒参加」など9点を要望した。代表で慶應義塾大学大学院2年の室橋祐貴さん(32)はこう話す。
「制服や校則に法的な根拠はありません。『たまたま理解のある校長や教員のいる学校なので変えられた』というのではなく、どこの学校でも生徒、教員、保護者の3者で民主的に見直しができる仕組み作りが重要です」