鈴木:本当にそうですね。まさに今、自分が思っている以上に、自分が向き合っている人は自分の権力とか力に向き合っていたというストーリーを書いているところなんです。

■子どもにどう伝えるか

田中:鈴木さんが創作されているような物語が、世の中に増えていくことはとても大事だと思います。やっぱりストーリーに乗っているとわかりやすい。今僕らが話していることを、論文やエッセイにしたためても、説教臭くなってしまうけど、物語だとうまく視聴者や読者に伝わりやすいなと。

 あとは僕自身、どうしても意識が直らない側面があるので、子どもに対してこういう問題をどう伝えていくかという視点は、大事なのかなと思いますね。

鈴木:うん、そうですね。

田中:うちは長男が5歳で「ちびまる子ちゃん」を見た流れで「サザエさん」を見たがる。でも波平がフネに「母さん、新聞」って毎週のように言う。先日は、ノリスケさんが若い時の話で「ノリスケはだらしないから結婚した方がいい」というストーリー展開があった。身の回りの世話をしてもらえるから結婚しなよという話ですよね。息子に見せてもいいけど、親が解説してあげるべきというか、かつてこういう時代もあったよ、と時代劇として話すとか。

鈴木:この間、ランドセルの話になって。息子は「赤がいい」って言ったんです。妻と話して、あと1年考えて本当に赤がいいならいいんじゃないかと思うけど、入学後に恥ずかしいと思う可能性やいじめの原因になったらどうするのか。その時に親としてどう説明できるのかっていうのは、すごく考えますね。

田中:日本は男女の区別がかなり強い社会なので、鈴木さんがおっしゃった懸念もわかります。僕らは学校について行けないわけで、そこで子どもに何が起こり得るかっていうことについては、ケアしてあげなきゃいけないんだろうなと思いますね。

■ほかの父親と比べない

鈴木:家事育児の分担については難しくて、その割合は各家庭によって違うと思うんです。共働きなのに夫が何もしない、育児を任せきり、なんていうのは人として論外ですけど、でも旦那さんの稼ぎで家賃や生活費を払っている場合、旦那さんが家にお金を入れることにめちゃくちゃ責任を感じているケースって多いと思うんです。家事育児の分担はジェンダーの視点だけでなく、その家庭のメンバーでのお金や時間の貢献をトータルで見ないと危ないと思っていて。

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