国内で新型コロナウイルスワクチンの接種が本格化するにつれて、アナフィラキシーなど、副反応の報告も相次いでいる。専門家は「想定の範囲内」とする。AERA 2021年3月22日号はから。
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3月に入り、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が国内でもようやく本格的に始まりつつある。3月11日現在、全国の約640施設の医療従事者に対して約18万1200回、接種が行われた。
接種が進むにつれ、副反応の報告も増えている。11日現在、37人が、接種後に激しいアレルギー反応「アナフィラキシー」を起こしたと報告された。過半数は、過去に食品などに対してアナフィラキシーを起こした経験があったり、医薬品や動物などに対してアレルギー反応を起こしたりしたことがあった。一方、基礎疾患がない人も4人いた。すでに全員、回復している。
アナフィラキシーは、じんましんが出る、皮膚が赤く腫れる、息苦しくなる、血圧が下がるなど、複数の臓器にさまざまな症状が起きる。アドレナリンを注射するなど適切に治療しないと、生命に危険が及ぶこともある。
現在、国内で打たれているのは、米ファイザー社と独ビオンテック社が開発し、緊急承認されたワクチン「コミナティ」だ。米疾病対策センター(CDC)によると、米国内で同じワクチンを接種した994万3247回のうち、アナフィラキシーが起きたのは47件。接種100万回につき4.7件だった。
■現状は「想定の範囲内」
3月11日までに国内で発生した接種後のアナフィラキシーの頻度を計算すると、接種100万回あたり204件になり、米国内の発生頻度よりもかなり高くなる。
この差について、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会の分科会長代理を務める中野貴司・川崎医科大学教授(小児科)は、日本人の方がアナフィラキシーの発生頻度が高いと結論づけるのには時期尚早だと言う。
「米国や英国でも接種が始まった当初は、アナフィラキシーが比較的、多く報告される傾向があったが、接種回数が増えるにつれ落ち着いていった。接種が始まったばかりの国内では、今は接種後の反応について情報収集することが大切な時期なので、確定診断がつかなくても、疑いのある人も含めて広く報告されている。今後、接種との因果関係や、アナフィラキシーの診断基準に該当するかどうかをきちんと精査する必要がある。これまでのところ、想定の範囲内と言える」