12日に開催された、厚労省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、3月9日までに報告された国内17件のアナフィラキシーについて、専門家の評価が公表された。この評価は接種を実施した施設からの報告やカルテに基づいて行われた。9件は、情報が不足していてアナフィラキシーかどうかきちんと診断できない、1件はアナフィラキシーではない可能性が高いとされた。

 検討部会は、比較的軽症の人が多いことなどから、ワクチンの接種を継続するとした。ただし、接種会場ではアナフィラキシーに対応できる準備をきちんとし、接種前にアナフィラキシーやアレルギーの経験をよく確かめ、接種後には15~30分間、体調を観察することが重要としている。

 アナフィラキシーは、鶏卵やそば、小麦、ピーナツなどの食品、ハチに刺された後などに起こるほか、血管造影剤などの医薬品に対しても起きることがある。新型コロナウイルスワクチンの場合、ワクチンに含まれる高分子化合物「ポリエチレングリコール」が原因ではないかという指摘があるものの、まだ因果関係はきちんとわかっていない。

■ワクチンは免疫がカギ

 米CDCは、ポリエチレングリコールや、似た構造の高分子化合物「ポリソルベート」に対して急性アレルギー反応を起こした経験のある人は、ワクチンを接種しない方がいいとしている。

 ポリエチレングリコールは、クリームなどの化粧品や、大腸内視鏡検査前に飲む下剤などの医薬品にも使われている。ポリソルベートは、ポリオやロタウイルス、小児肺炎球菌などのワクチンにも含まれる。

 アナフィラキシーのように生命に危険が及ぶ恐れはないが、もっと発生頻度の高いさまざまな副反応が報告されている。

 海外の臨床試験(治験)では、接種した部位の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、寒気、関節痛、発熱といった反応が報告されている。国内で160人を対象に実施された臨床試験では119人がワクチンを打ったが、接種部位の痛み、倦怠感、悪寒、関節痛を訴える人の割合が、海外よりも若干多かった。

 東京大学定量生命科学研究所の新藏礼子教授(感染・免疫学)は、こうした反応について、こう説明する。

「痛みや発熱が起きるのは、体内に入ってきたワクチンという異物に対する免疫反応が起きているから。体内の免疫が働かないとワクチンの効果は発揮されない。軽い痛みなどが起きるのは免疫が働いている証しと考えられる」

 痛みや発熱といった症状は数日内にはおさまるが、接種後1、2日は腕が上がらなかったり、疲労感が強くて勤務できなかったりという場合もある。

 3月8日に職員へのワクチン接種が始まった藤田医科大学病院(愛知県豊明市)では、原則として翌日が非番、あるいは手術の執刀をしない時にワクチンを打つよう日程調整しているという。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年3月22日号より抜粋

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