2022年度から高校の保健体育の授業で「精神疾患」について教えることになった。学習指導要領の改訂により約40年ぶりに復活することになる。これまでも「心の健康」については教えられてきたが、さらに「精神疾患」を教えるべき理由や背景とは? 東海大学体育学部体育学科の森良一教授に聞いた。
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――2022年度から高校の保健体育の学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が盛り込まれます。全国一律に学校の授業で、精神疾患について教えることになりますね。
学習指導要領の改訂はおよそ10年ごとに行われており、今回の改訂では「現代社会と健康」というカテゴリーに、「精神疾患の予防と回復」が盛り込まれます。
現行(=今回の改訂前)の指導要領にも「精神の健康」という項目で精神疾患の予防、つまり病気になる前までの内容は入っています。具体的には、ストレスにどう対処していくか、またはストレスがかかりすぎると心の病気になる可能性があるよ、といった内容です。心の健康の保持増進がメインで、精神疾患にはダイレクトに触れていません。
今回の改訂ではそれと入れ替わる形で、「精神疾患の予防と回復」が入ることになります。
――保健体育で教える項目なのですね。
もともと科目保健を保健体育の教科として教えるのは 小学校、中学校、そして高等学校と 教育を積み重ねることによって、生涯を通じて、つまり大人になっても健康に過ごす能力を身につけるというのが目的です。健康課題への対応の仕方を教養として身につけることによって、将来さまざまな問題に直面した時に対処できるようにする、ということです。
健康や安全が中心なので、自然災害による傷害の防止といった命にかかわる内容もたくさん盛り込まれています。性教育も若い世代に欠かせない内容ですよね。
病気に関しては、精神疾患のような若い世代で発症しやすい病気だけでなく、中高年以降に患者数が増えるがんについても学びます。若い今は関係ないと考えてしまうかもしれませんが、生涯2人に1人ががんになる時代を生きる中で、必ずその知識は必要になる。健康教育の一環としてがんについて学ぶことが欠かせないだろうということです。