日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「口唇ヘルペス」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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「くちびるに水ぶくれができました。チクチク痛みます……」
口唇やその周辺に、チクチク・ピリピリするような違和感や痛みが出現したあと、軽い痛みを伴って水ぶくれができる「口唇ヘルペス」は、外来診療でよくみかける疾患の一つです。昨年あたりからでしょうか。私も、体調がすぐれない時や寝不足な時、疲れやストレスが溜まってしまった時に、口唇ヘルペスが出現するようになってしまいました。特に、新型コロナウイルス感染症が流行してからは、再発するまでの期間が短くなってしまったような気がします。
気にしないようにしようとしても、口唇の違和感や腫れはどうも気になるものです。自分自身が口唇ヘルペスになってからは、「ヘルペスって辛いな……」と、くちびるが腫れて違和感を感じる度に思っています。そこで、今日は外来診療でよくみかける「口唇ヘルペス」についてお話ししたいと思います。
元々「ヘルペス」とは、ギリシャ語で「這(は)う」という意味で、這うように拡大する皮膚疾患の総称として使用されていたようです。それが次第に、水疱を作る疾患のみに使われるようになり、現在は単純疱疹(単純ヘルペスウイルス感染でおこる疾患)と帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ウイルス感染で生じる疾患)の2疾患を指すようになりました。
口唇ヘルペスとは、くちびるにできた「単純疱疹」のことを指します。単純疱疹とは、単純ヘルペスウイルスへの初感染や再感染、再発によって皮膚や粘膜に小さな水疱やただれ(びらん)を生じる疾患です。単純ヘルペスウイルスは、皮膚や口腔、口唇、眼や性器など、からだのどこにでも感染します。そのため、口唇にできたヘルペスを特に口唇ヘルペスと呼んでいるのです。その他、顔面ヘルペス、性器ヘルペス、ヘルペス性脳炎などがあり、部位ごとに名前がつけられています。