不況に入ってから社会に出た、バブルを知らない「不況ネイティブ」。彼らはアベノミクスに対しても、決して期待ばかりを抱いているわけではないようだ。
民主党政権や政治への失望からか、先の総選挙では30代(50.1%)と20代(37.9%)は際立って投票率が低かった。一方で、安倍首相の外交姿勢などへの評価もあり、消極的にせよ積極的にせよ若年層は安倍政権を支えている形になっている。
とはいえ、20~30代の不況ネイティブ世代が多く集まる投資セミナーを主催するS&S investments代表の岡本聡(33)は、こう話す。
「若い世代はすでに日本の政治を信用していない。投資に興味をもつのも自分の身は自分で守るため。20~30年先を考えた長期投資なので、景気がよくなっても短期で売り買いをするような人はいない」
政治に期待するだけでもない。不信感や警戒心を募らせるだけでもない。この世代に共通するのは、自分の身は自分たちで守る、という気持ちだ。堀江敦子(28)は3年前、当時勤めていた大手IT企業を辞めて、学生たちが実際の子育て家庭で育児を体験する「ワーク&ライフ・インターンシップ」事業の会社「スリール」を立ち上げた。
子育てインターンに参加する学生の9割が女性。うち3分の2が、仕事も子育てもと欲張るバリキャリ志向でもなく、最初から子育てに専念したいと考える専業主婦志向でもない“もやもや女子”だという。
「私たちの世代は『どうせ世の中よくはならないだろう』と社会に不信感を持っている。社会は子育てを応援してくれない。仕事でサバイブしていく自信もない。どこに転んでも怖い、と感じているんです」
(文中敬称略)
※AERA 2013年5月6日・13日号