■自分の人生を大切に

——働き方についても自身の考えで変えてきた。

池田:19歳、20歳の頃はいっぱい働くことがかっこいいと思っていたんです。でも、2、3年前くらいからかな。散歩をするなど日常に重きを置き始めてから、あまりにロボットみたいな働き方をしていたことに気がつきました。それまで2~3時間くらい眠れれば寝たというような生活でした。肌も荒れて体も疲れていて。私が無理をすると、これからの後輩たちがもっと大変になってくる。私はまだまだ働いていくつもりですが、快適な働き方を提示する人がいてもいいのではと思い始めたんです。少しずつ自分の人生を大切に、尊重してもらえる環境作りを自分でできるようにしたい。ファンの方々が若いこともあるので、体をボロボロにするような働き方は参考にしてほしくないなと思ったこともあります。

——考える習慣は読書好きであることと無関係ではないだろう。小さな頃から本を「ヤバいくらい読んできた」。BLM(Black Lives Matter)問題では聖書や小説を読んで考えた。

池田:小説の読み方は「たどる派」です。例えば、原田マハさんを読んだら原田宗典さんを読む。兄妹のルーツをたどって類似点を探してみる。ショパンを聴いたらジョルジュ・サンドの小説をたどって、「なんで男装麗人って言われてるんだろう」と歴史をたどって年表にする。BLMの問題で読んだ奴隷制の歴史の本もそうでした。私は1800年代の小説が好きです。小説の背景にある田舎と、栄えている町では全然話が違う。田舎ではまだ妖精が出てきているのに、都会では消費社会の始まりが見えるというか、人間がものすごく足蹴にされている時代が始まっていたり。同じ星なのにこんなに違うんだ、といろんなことが見えてくるから楽しいんです。

——それは「5歳の子どもの感覚」に近いと言う。

池田:周囲の目を気にせずに、自分が思っているままに言えてしまうことってありますよね。今はコンプライアンスが強いのでこんな比喩では誤解されてしまうのではという表現も、当時は大いにありましたし、悪魔や妖精が人間の負の感情の比喩として出てきたりするのでわかりやすい。トルストイの『イワンのばか』も児童文学のように読めますし、グリム童話も絵本に近い感覚で読みます。長いことわざみたいな感覚ですね。

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