幹線道路沿いにある保育園の昼寝中の室内音を調べると、窓を閉めた状態でも、ダンプカーの通過などで音が10デシベルも上がった。昼寝中の子どもが音で起きてしまうこともあった。

「高架下の園では、音に加えて保育室が振動するところもあります。子どもは疲れると寝てはくれるのですが、眠りの質が懸念されます」(船場さん)

 保育施設と音の環境を研究する片岡寛子さん(電気通信大学特任助教)は、狭い園庭にもかかわらず、拡声器で子どもたちに声を掛ける園に遭遇した。その保育園は幹線道路沿いでかつ高架下にあり、そうでもしないと保育士の声が聞こえないからだ。

「保育施設から出る騒音は気にしなくていいですし、駅近で送迎も便利です。でも、騒音に曝露(ばくろ)された環境で子どもが育つと、集中力が下がるという研究もあります。子ども目線の立地とは言えません」(片岡さん)

 船場さんの研究では、音環境の整っている施設とそうでない施設では、子どもたちの行動にも違いが見られた。

「まず子どもの声の出し方が違います。吸音材を使った音環境を整えた園の子どもたちは、集中して遊び込みやすくなり、穏やかで落ち着く傾向にあります。反対に吸音されていない騒がしい環境にいると、一つの遊びに集中する時間が短い、走り回る子どもが増えるなどの傾向がみられます」(船場さん)

 こうしてみると、子どもと騒音の問題は施設の「外」だけでなく、「内」の問題にも波及している。(フリーランス記者・宮本さおり、ライター・大楽眞衣子)

AERA 2023年2月6日号より抜粋