新型コロナウイルスの流行が長期化する中で、孤独問題が深刻化している。孤独・孤立問題を担当する坂本哲志地方創生相に、今後の取り組みや意気込みを聞いた。
【グラフ】浮き彫りになる海外との違い 日本人は家族以外に頼れない
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私は熊本県陣内村(現大津町)の生まれで、農村の水田地帯で育ちました。子供のころは田植えや稲刈りは共同作業で、濃密な人間関係。その意味では、孤独を感じるスキもない暮らしでした。
そんな暮らしがイヤで、都会に出てきたという人たちも多数います。しかし、「個の世界」で暮らしてみると、困っていても頼れる人はいない。日本人の多くは宗教を基礎とした日常的なつながりもない。かつては会社に助け合いの仕組みがありましたが、それも失われつつある。今の日本は、誰でも孤独に陥る環境です。
新型コロナウイルスの感染拡大で、問題はさらに深刻化しました。昨年の小中高生の自殺は499人で、統計のある1980年以降で最多です。そのほか、非正規雇用で仕事を失った人、一人暮らしの大学生、言葉が通じない外国人など、さまざまな人が孤独に追い込まれています。
国会で野党から孤独問題が提起されたとき、私は内閣府の大臣が担当したほうがいいと感じました。というのも、自殺対策は厚生労働省、子供の貧困は内閣府、子供食堂への食材提供は農林水産省が実施しています。今後の孤独対策は、各省庁でタテ割りになっている政策を、ヨコにつなげる必要があります。それには省庁の枠にとらわれない大臣が司令塔になることが最適です。
英国に続いて日本でも孤独・孤立問題を担当する大臣ができたことは、海外からも注目されています。
私自身も子供の貧困対策に力を入れてきたこともあり、孤独問題に取り組みたいと考えていました。さっそく全省庁会議を開催し、SNS活用、孤独・孤立の実態把握、NPO連携の三つのタスクフォースを立ち上げました。緊急的にNPO法人への支援策をまとめ、女性・子供支援や自殺対策、生活に困っている人たちに食品を提供する「フードバンク」への財政支援、公営住宅を低価格で貸し出す仕組みなどに予算措置をしています。
孤独・孤立対策担当室には常駐職員6人、兼務を含めると30人以上を配置しました。今年6月に策定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に孤独・孤立対策を盛り込みます。
かつて「一億総中流社会」と呼ばれた日本には「分厚い中間層」が存在していました。しかし、格差の拡大で中間層は薄くなり、支援を必要とする人が増えています。そんな背景もあり、孤独の問題を一気に解決することは難しい。
だからこそ、現場に近いNPO法人や民間企業などの協力が不可欠です。大きなネットワークを作り、支援が必要な人がつながりやすい仕組みを築く。その土台となる政策を考えたいです。
※週刊朝日 2021年4月9日号