春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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イラスト/もりいくすお
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 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「国際結婚」。

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 先日、仕事で青森へ行った。新青森駅からタクシーで会場に向かう途中、運転手さんがシャッターの閉まった店舗を指して言う。「覚えてます? アニータ。何年か前に住宅供給公社の経理担当が14億円横領して貢いでた、チリ人妻。働いてた店、ここ」。したり顔の運転手さん。青森に来るたびに『アニータの店』の跡地を教えてもらう。当然いつも違う運転手さんだ。「回収出来たのたった数千万らしいですよ(笑)」。今日の運転手さんはちょっと嬉しそうだ。アニータとその夫は青森鉄板の『国際結婚』だ。岩手ならたぶん昌夫とシェパードだ。

 噺家にも国際結婚の方は何人かいるが、先方の親に職業を説明するのが大変だろう。「ジャパンの伝統的な衣装を身に纏って、ジャパンのクッション的なものに膝に悪い座り方(正座)をして、団扇的なものとハンカチ的なものを駆使して、面白可笑しい話をする人なの……パパ」。私がパパなら「娘よ、もう一度最初から頼む」と言って、怪訝な顔でパイプを燻らせる。

 国際結婚した有名人を調べてみた。そう! パンチ佐藤! 子供心に『パンチ佐藤、国際結婚』というスポーツ新聞の見出しを見たとき、なんとなく心が温かになった気がしたものだ。『パンチ佐藤』を外国人の両親に説明するのは噺家以上に難しいはずだ。

父「パンチ? 彼はボクサーなのかい?」
娘「いいえ、プロ野球選手よ、パパ。髪型がパンチパーマだから『パンチ』なの。あのイチローとチームメイトなのよ、パパ」
母「イチローなら知ってる。その人も朝からカレーなの?」
娘「カレーも食べると思うけど……この人よ、ママ(写真を見せる)。ステキでしょ?」
母「これがパンチパーマ? まるでブッダね。きっと穏やかな方ね(喜)。やっぱり朝はインドカレー? 金のネックレスがジュズみたい(喜)」
父「待ちなさい。(調べて)これはどうやらジャパニーズマフィアが好んでする髪型らしいじゃないか! (また調べて)プロフィールに『クマガイグミ』出身と書いてある!? 『クミ』というのはマフィアグループの呼称だろう! 反社じゃないのか!?」

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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