作家の下重暁子さん
作家の下重暁子さん
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、3月で終了したテレビ番組について。

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 別れの季節である。出会いはこれから始まる期待があるが、別れはそこはかとない哀惜がある。

 テレビ番組も三月で終わるものがいくつかあって、長年馴染んだものも消えていった。

 私に縁のあるもので言えば、フジテレビの『とくダネ!』は、朝五時半起きで、朝に弱い私は月一回のコメンテーターも必死だった。

 TBSの『爆報!THEフライデー』は金曜日の夜七時、もちろんスタジオ収録で、バラエティに縁のない私だが、年に一回、夏に軽井沢の私の山荘に同じスタッフがやってきて、暖炉で薪をあかあかと燃やし、そこでインタビューをする。もちろんスタジオでお笑いのタレントさん達とも一緒になり、その凄まじいまでの切磋琢磨ぶりを目にする面白さもあった。

 様々な人生を紹介する人生讃歌の面もあり、私が司会の爆笑問題のファンだったこともあって引き受けていた。女性のプロデューサーと男性のディレクターを始め、スタッフの雰囲気が良く、ボーイスカウトの腕を生かしたディレクターによる薪の組み方が見事だった。

 今年はコロナで会えなかったのが残念だったが、終わるにあたって、プロデューサーから数枚もの心温まる自筆の封書をいただいた。桜の花弁の散る、気を遣った美しい便箋、ほんとうに嬉しかった。

 テレビ業界は、「こんちは、さよなら」のその場限りのつきあいが多い中で、又必ずどこかでと思う。

『とくダネ!』からも、こちらは関係者に出すための印刷ではあるが、司会者の小倉智昭さんの人柄が滲み出る文面だった。

 二十二年もの間、毎日三時起きで、八時から十時までの生番組を仕切ることの大変さは、かつて放送界でキャスターを務めたこともある私にはよく分かる。途中体を壊し、手術をして番組を休んだこともあった。

 そして最後の日、三月二十六日の『とくダネ!』は、私は三月は3.11だったので出番はないが、家で八時からずっとテレビの前に座っていた。

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下重暁子

下重暁子

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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