Q.ラジオ講座の反応で、うれしかったことはありますか。
――番組開始当初から聞いてくださっている熱心なリスナーの方々が、毎年「リスナーの集い」を開いてくださっています。また、東京や大阪などで番組のテキストを使って勉強会を開いているグループや、ネット上で意見交換や質疑応答などができるサイトもあります。世界中どこに行っても、番組を聞いていたという人にお会いします。「番組を聞いていたおかげで海外駐在員になれた」「海外特派員になれた」と言われることもありました。
またビジネスパーソンや研究者だけでなく、番組を通じて英語の勉強を続け、同時通訳者や英語教師になられた方もいらっしゃいます。そういう報告を聞くのはうれしいですね。長きにわたって講師を続けてこられた最大の要因は、リスナーからのフィードバックです。番組に関する反応がなければこれだけ長く続けることはできなかったでしょう。
Q.NHKラジオ講座がおすすめの理由はどんなところにあるでしょうか。また、毎日忙しい中で、ビジネスパーソンが英語学習を継続するのは、なかなか難しい面もあります。独学でモチベーションを保つコツを教えてください。
――NHKラジオ講座は、一流の講師がレベルの高い講義をしてくれています。しかも安価なテキストを使って。そうした講座を利用しない手はありません。独学でモチベーションを保つのはなかなか難しいと思います。
やはり一人で勉強するより仲間を見つけるのがいいでしょう。また、新しいテクノロジーをうまく利用されるのがいいと思います。私の時代には生の英語を聞くにあたってもFENくらいしかありませんでしたが、今ではいろいろな方法がありますね。
Q.春から英語学習をスタートするにあたって、どんなことを心にとめておけばいいでしょうか。
――日本人ビジネスパーソンに必要なのは、専門分野だけではなく、英語で雑談ができる力です。時間管理をきちんとして、英語学習のための時間を作り、自分の学習の着地点を明確にして、そこに到達するように日々努力を重ねることが大切です。
Benjamin Franklin(1706-90)の言葉にこんなものがあります。
Dost thou love life? Then do not squander time, for that is the stuff life is made of.(あなたは人生を大切に思っているか。そうであるなら、時間を浪費してはならない。人生は時間から成り立っているのだから)
◆杉田 敏(すぎた・さとし)
大学卒業後「朝日イブニングニュース」記者を務め、米国に留学して「シンシナティ・ポスト」経済記者となる。バーソン・マーステラ(ジャパン)社長、プラップジャパン代表取締役社長ほかを歴任。1987年からNHKラジオでビジネス英語番組の講師を務めた。第72回日本放送協会放送文化賞受賞。
(構成/岡田慶子)
※『AERA English 2021 Spring & Summer』より