このような構想が着々と進めば、文大統領の下がっている支持率も回復し、来年春の大統領選挙で政権継続につなげられるという戦略なのだ。

 ところが、北朝鮮の東京五輪「不参加」発表は、文大統領のこのような計画に水を差した形になった。しかし、青瓦台などは北朝鮮と水面下の接触などを通じて決定はまだ、変えられると考えているという。

「北朝鮮の不参加について青瓦台は『北朝鮮指導部の決定を前提としたものかどうかの確認が必要』と発言しています。その意味は、北朝鮮当局が談話や声明など正式の発表ではなく、体育省がホームページで公開したものであるため、金委員長らの最終決定ではない可能性もあるという希望的な観測を持っています。東京五輪まではまだ時間があります。コロナ感染症の状況が変わり、高官間の交流は行われることもあり得ます」(韓国与党関係者)

 南北は東京五輪で女子バスケットボール、男女漕艇、男女柔道、女子ホッケー種目の統一チームを構成することで合意していた。

 6日時点で北朝鮮選手団は、アーチェリー2枚、陸上4枚、卓球4枚、水泳ダイビング1枚、体操1枚、レスリング3枚、射撃2枚、ボクシング1枚の8種目18枚の東京五輪出場権を確保していた。今後、伝統的なメダル種目の重量挙げで女子4枚、男子2枚の出場権の確保する可能性もあるので、それを合わせると9種目、24枚に増える可能性もある。

 北朝鮮は東京五輪不参加の理由としてコロナ感染から選手保護を掲げたが、それは表向きな理由に過ぎないだろう。北朝鮮オリンピック委員会総会が平壌でテレビ会議を行ったのは3月25日。その後、総会開催の事実は報じたが、こうした五輪不参加の決定事項は11日間も明らかにしなかった。

 北朝鮮では「朝鮮労働党第6回細胞書記大会」が4月6日から平壌で大々的に開催された。ところが、1万人が参加した大会に金委員長はもちろん、全員マスクをつけなかった。この光景はコロナ感染症がある程度、落ち着いていることを物語っている。

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文政権を見限った北朝鮮