漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「殴り愛、炎」(テレビ朝日系 前編4月2日、後編9日23:15~)をウォッチした。
【画像】山崎育三郎があの「伝説」の名セリフを!?ドラマ「殴り愛、炎」のイラストはこちら
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トンチキドラマ界の帝王・鈴木おさむ脚本。浜崎あゆみの自伝的ドラマかと思いきや、「博多通りもん」(お菓子)みたいな眼帯つけた田中みな実と、「今度『え?』って言ったら燃やすよ!」と吼(ほ)える水野クレージー美紀しか覚えていない「M愛すべき人がいて」。
学園ミステリーかと思いきや、田中圭がゾンビになっていた「先生を消す方程式。」。どこまで真顔でコント、いや芝居ができるか、俳優の折れないハートが試される。
そんな鈴木おさむの最新作。今回の選ばれしサイコパスキャラは、心臓外科医・明田光男役の山崎育三郎だ。光男の趣味はバードウォッチング。
看護師・豊田秀実(瀧本美織)との結婚式を控え、仲むつまじく二人で野鳥を数える。
ここで陶芸家・緒川信彦(市原隼人)が登場。心臓発作を起こして病院に運ばれてきた彼は、秀実が高校時代に憧れていた人だった。
前後編だから展開がやたら速い。ソク回復した信彦が、ソク上半身裸で秀実をハグ。ソク疑心暗鬼の育三郎。
その後、工房で再び発作を起こした信彦の元に駆けつける秀実。「心音聞かせてください」。マッチョな信彦の大胸筋に耳をビターッとくっつける。おい、看護師ならAED持って来い。
そして、そのまま二人は映画「ゴースト」ばりの密着陶芸プレーをスタート。すっかりエロいムードになり、ついにはキスしたその瞬間。
ピヨーッ! 鳥の鳴き声と共に育三郎登場。右手にカウンター(キスの回数をカウントしていた)、左手に双眼鏡の野鳥の会スタイル。
「ここにいるよー、見てたよー、ずーっと見てた」
ちなみに「ここにいるよー、見てたよー」は、鈴木おさむドラマ「奪い愛、冬」で、水野美紀がクローゼットから飛び出して言い放つ、伝説の名セリフである。ようこそ育三郎、めくるめくトンチキドラマの世界へ。
「僕のフィアンセの唇を11回も奪った!」。カチカチとカウントしながら迫る育三郎。殴り殴られ殴り愛。信彦に殴られ、冷凍マグロみたいにスポーンと飛んでいく育三郎。
「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」の中でも言われてた、「(ドラマは)当たってバズればいいんだよ」って。まさにバズりバズられバズり愛、上等。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2021年4月23日号