21年卒生の学年主任で数学科の三井田裕樹(みいだゆうき)教諭は説明する。
「ふたを開けてみると医学部が多い学年でした。理IIIに12人、東京医科歯科大に6人が受かっています。高2の頃に医科歯科大や筑波大の医学部を見学するプログラムを受けた代なので、その影響もあるかもしれません」
超進学校ならではの挫折
何年かに一度、医学部志望が目立つ代があるという。医師を親に持つ生徒が多いなど理由はさまざまだが、学校側が生徒たちの志望を誘導するようなことはしない。また、文部科学省が02年に設置した「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受けてから理系進学が増えた時期もあったが、今は落ち着いてきたという。
何でもできる生徒ばかりが集まっているようにも思えるが、
「筑駒生はみんな、強い挫折感を味わっているんです」
と、三井田教諭は言う。
「中学受験を終えて自信満々で入ってくるのに、周りには自分よりも何かが秀でた生徒がいるんです。英語やプログラミング、折り紙までジャンルは様々ですが、いつまで経っても自分よりすごいと思える仲間がいるので、6年を通して伸び続けることができます」
挫折と聞けばネガティブに受け止めやすいが、決してそんなことはない。それぞれが個を伸ばす要素となっているのだ。
「教えない」という考え方
さらにその感覚は生徒だけではない。三井田教諭は言う。
「今は授業もすごく楽しいけれど、最初は私も教室に行くのが嫌でした」
数学を教えようと意気込むも、想定通りに進まない。どうすれば生徒が授業に参加してくれるのか試行錯誤する日々が続いた。わかりやすく教えることが教師の仕事だと思っていたが、筑駒ではわかってしまうから聞いてもらえないときもある。そんな時に先輩教師からこう言われた。
「生徒に教えているうちは通用しない。生徒から教わるくらいでいい、と。最初は理解できませんでしたが『教えない』って考えも生徒との関係性を良いほうに傾けられるので、とても奥深いんです」(三井田教諭)
(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年4月19日号「難関大学に現役合格できる高校」特集から抜粋