この記事の写真をすべて見る
 子供向けの番組として「『おかあさんといっしょ』はいいけど、YouTubeはイヤだ」、という人がいます。これに対して「YouTubeにも公式チャンネルはあるし、ちゃんとした動画もあるし、Eテレと大差ないじゃないか」という意見もありますが、私はYouTubeとEテレのコンテンツは全く別物であると考えています。

 例えば、子供にYouTubeでアニメや子供向け番組の公式チャンネルを見せたとします。1時間後にその子が見ているコンテンツは、YouTuberが制作した動画になっているはずです。YouTuberの動画は、視聴者にアプローチするように精密かつ戦略的に作られているからです。教育的な動画としては、確実に圧倒的にEテレやNHKに軍配が上がります。一方、Netflixのコンテンツは、EテレやNHKになり得ると考えます。

 EテレやNHKのコンテンツの強みのひとつに「数字を追わなくていい」という点があります。これはYouTubeに対してだけでなく、民放とも、大きな差を生じさせています。制作費は受信料で、「文化的な番組」を作る趣旨で制作されているNHKやEテレのコンテンツと、制作費をスポンサーから出してもらい、視聴率という数字で広告効果を出さなければならない民放では制作するコンテンツの趣は全く異なります。

 民放では、オーケストラや伝統芸能や障害者などのマイノリティーに特化した番組は、なかなか組めません。EテレやNHKという公共放送だからできるコンテンツは、結構多いのです。そして、YouTubeのコンテンツの多くは、民放に近いものです。YouTuberの収益源は、Googleからの広告収益や物販や集客の収益です。つまり、YouTubeのコンテンツには企業やスポンサーという「お金をだす存在」がいるのです。企業が運営する場合も、制作費を回収するために、再生回数や売り上げなどの数字が必要になります。そのため、YouTubeでは、戦略的に「数字が取れる動画」を制作するのが基本です。

「数字をとれる動画」は、食べ物で例えるとジャンクフードや甘いモノやお酒やタバコのような動画です。味付けが濃くて、油っぽくて、刺激的な食べ物は人気です。一方、NHKやEテレが制作するコンテンツは、栄養バランスのとれた野菜も豊富な体に良い食事、と言えます。特に子供の場合、大人のような理性はほとんど働かず、本能で行動するので、お菓子もジュースも、好きなものをあるだけ食べようとします。これが、YouTubeで起こっていることです。

次のページ