■TOEICもマンガも同じ 学ぶ「英語」は一つ
「○○対策の英語、といったタイトルの教材もたくさん出ていますが、『英語』そのものは一つしかありません。学校で勉強した英語も、マンガのセリフで使われている英語も、同じ『英語』。勉強して力がつけば、TOEICにも入試にもマンガにも対応できるようになります」
解説ページは、マンガのセリフを使った語彙問題に挑戦する“Questions & Answers”、文法用語の詳しい解説や語彙の類似表現をチェックする“Attack on 英文法”、英語に関する豆知識を紹介する“Attack on vocabulary”の3コーナーで構成されている。ちなみに、各コーナーのマークに使われているのは、進撃ファンにはおなじみの「兵団エンブレム」。解説ページで問題として取り上げるセリフは赤で表記されていたり、英語版ページの欄外に語注があったり、学習効率を上げる工夫もしっかり施されている。
もう一つこの本の特徴と言えるのは、文法解説の順番だ。一般的な参考書では品詞から始まって、第1文型、第2文型……となるが、こちらは「マンガのセリフに出てくる順」。どこでどの文法事項が解説されているかは、巻末の索引で調べることができる。解説文は参考書としてはコンパクトだが、仮定法、使役動詞、分詞構文など年月を経てあやふやになりがちなエリアはしっかり網羅。さらに「go home に前置詞が不要なのは、home が名詞ではなく副詞だから」「現在完了形は、過去の出来事が何らかの形で現在の状態に影響を与えている状況を表す」など、学習者が疑問を感じがちなポイントも、分かりやすく説明されている。
「大人と高校生では、洞察力も知識量も違います。昔はまったく理解できなかった古文や歴史の話が、大人になったら納得できたということ、ありますよね? 英語も同じで、ある程度年齢を重ねてから改めて勉強すると、いろいろなことが簡単にわかるものです」
■日常で使える「リアルな表現」
一冊読み終えたら、自分の目標に合わせてTOEICや英検の勉強を始めるのもよし、先に紹介した『バイリンガル版 進撃の巨人』や英語版コミックで物語の続きを読むもよし。いわゆる教材や教科書の会話文は味気なくて……という人は、『進撃の巨人』のセリフで会話のトレーニングをしてみよう。そのセリフが使われたシーンのマンガを見ながら感情を込めて音読すれば会話のシミュレーションになるだけでなく、日常で使える「リアルな表現」のストックを増やすことにもつながる。Some stuff happened.(色々あって)やI won’t let you.(駄目だからね)、I finally made it.(やっとここまで辿り着いた)などは、そのいい例だ。
「こういう何げない一言を、英語ではどう言い表すのか。英語を話せるようになるためには、その知識を積み重ねることが重要だと思います。マンガは内容の大半がセリフなので、会話表現に触れる教材としても秀逸。セリフの音読である程度雰囲気がつかめたら、オンライン英会話や英語吹き替えのアニメにも挑戦してみてください」
◆廣政愁一(ひろまさ・しゅういち)
東進ハイスクール、河合塾で英語講師を務め、現在は株式会社学びエイド代表取締役社長。現役の予備校講師や学校教員にも勉強法の指導を行う「先生の先生」として活躍する。著書に英語学習の参考書「正攻シリーズ」(研究社)がある。
(文/木下昌子)
※『AERA English 2021 Spring & Summer』より