「バズる」とはネット用語で、特定の人物や話題に関心が集まり、過熱気味の盛り上がりを見せること。「AERA Money 2021春号」に6ページのインタビューで登場しているリュウジさんは、手軽でおいしい創作料理のレシピがバズった料理研究家だ。
ツイッターのフォロワーは180万人を超え(2021年4月現在)、YouTubeの動画再生回数は2億回を突破した。2018年まで介護の仕事をしていたが、当時300万円だった年収が数十倍に跳ね上がったという。「でも僕が自分の会社からもらっている役員報酬は、会社員時代と同じ300万円なんですけどね」。レシピがバズり、人生そのものもバズった34歳——。
リュウジさんは高齢者向け住宅でコンシェルジュとして働いていた。カウンターで入居者の出入りを記録したり、介護サービスを手伝ったりすることもあった。「高齢者向け住宅では、僕は輝けなかったです。
お年寄りと話すのは好きでしたが、事務作業ができない。というか、できるけど、やらない。先輩職員にどうして事務をしないのかと問われ、この事務は必要がないと思うからだと答えました。すると『こいつはやる気がない』と怒られた(笑)」
それでも高齢者住宅では7年働いた。入居者に人気があったのと、人と接する仕事が好きだったことが理由だ。「入居者用のレストランがあるのですが、食事がおいしくなかった。
そこで僕は会社に提案しました。月1回、ディナーの日を設けて、僕のメニューを採用してほしいと入居者の満足度をアップしたいと思って」
リュウジさんの提案が実現したディナーメニューの中で一番人気だったのは「おでん」。特におでんの汁の味が好評だった。
「年をとると若いときに比べて足腰が弱っていきますが、味覚も鈍くなっていくようです。実は高齢者ほどパンチの利いた味つけを好み、おいしいと思ってもらえる傾向があります。
メニューを考えるとき、入居者にどこの店の何が好きかをヒアリングしたら、近所のコンビニで売っている濃い味の弁当がナンバーワンでした。だったらその『濃いめ』に寄せれば受けがいいはず。
塩分を考えると毎日はよくないですが、たまにはしっかりした味で『おいしかった~』って満足することも大事でしょう。
だからおでんの汁も、だしと塩分をビシッと利かせたものに仕上げました。大好評だったのは、狙い通りです」