次のバズりメニューは「ペッパーチーズ枝豆」。冷凍の枝豆を炒めて粉チーズと黒コショウをかけて食べる。このレシピでフォロワーは5000人に増えた。
極めつきは「無限キャベツ」。千切りのキャベツを湯通ししたあと、しらすを混ぜ、ゴマ油や塩コショウで味つけしたものだ。確かに無限に食べられるほどおいしい。そもそも「無限」というネーミングがいい。
ツイッターに投稿したところ「いいね!」あっという間に10万件を超え、フォロワーは1万人の大台に乗った。その後もフォロワーは増え続け、今や200万人突破も見えてきた。雑誌の取材やテレビ出演も激増。成功の秘訣(ひけつ)について、こんな例え話で説明してくれた。
リュウジさんはさらに続ける。
「次にツイッターのフォロワー数が威力を発揮するだろうと考えました。日本人は肩書で人を判断する傾向があります。でも僕には肩書なんて何もない。
そもそも日本には数え切れないほど料理研究家がいます。そんな中でフォロワーが何万人、何十万人といれば『フォロワー数が異常に多い料理研究家』っていう肩書になる」
料理はもちろん、プロデューサーとしても天才的な男なのである。
意外なメニューで注目され、フォロワーを増やしたあとは?
「レシピのブランド化です。どんなに上手に伝えても、ユーザーに作ってもらわなければはじまりません。そのため、大げさなキャッチコピーをつけることにしました。
『100年に1度』とか『世界一うまい』とか。
疑心暗鬼でもいいから実際に作って食べてもらう。おいしい!と思った人は僕のファンになってくれるわけです。
でもこれって両刃の剣ですよ。『世界一うまい○○』と名づけても、おいしくなかったら二度と作ってもらえない。
料理の腕で味が左右されるようなレシピは危険なので出せません。誰が作ってもほぼ同じ味で、おいしくないとダメです。レシピを出すのは毎回真剣勝負ですね」
大げさなキャッチコピーをつけるようになったのは祖父の言葉も影響している。
「大好きだった祖父に、人間はハッタリがすべてだから、お前もどんどんハッタリをかましなさいと言われて育ちました。
子どもの頃はよく理解できませんでしたが、今ならわかります。自分を大きく見せないと、そもそも誰も見てくれない。大きく見せてからが勝負です。
もし実力が伴わないと、見かけ倒しだと言われて終わりです。まずハッタリ、そこからがんばるという戦略はいろいろな場面で応用が利くと思います」
料理研究家と料理人には大きな違いがある。料理人はアーティスト。自分の腕前と発想で最高のものを作る。料理研究家はエンジニアに近い。食材や時間の制約がある中で最高の料理に近いものを作るシステム(レシピ)を考える。
(取材・文/大場宏明、編集部・中島晶子、伊藤忍)
※アエラ増刊『AERA Money 2021春号』より抜粋
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