映画「約束の宇宙(そら)」の監督は「ラスト・ボディガード」「裸足の季節」と話題作を連発しているフランスのウィンクール。母娘の愛を描くシーンを彩るやさしさに溢れた音楽を「戦場のメリークリスマス」の坂本龍一が担当しているのも話題。
フランス人宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は、欧州宇宙機関(ESA)で、長年の夢だった宇宙へ行くことを目指して、日々訓練に励んでいる。物理学者の夫とは離婚し、7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と2人で暮らす彼女は、ある日<プロキシマ>と名付けられたミッションのクルーに選ばれる。大喜びのサラだったが、このミッションに旅立てば、約1年間、娘と離れ離れになる。
宇宙に旅立つまで2カ月しかない。もし自分に万が一のことが起こったらと、ナーバスになるサラ。ステラはそんな母とひとつの約束をする。それは「打ち上げ前に2人でロケットを見に行くこと」。サラは、その約束を果たすことができるのか──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
宇宙飛行士で母親の女性が直面する苛酷な訓練と娘を思う気持ち。訓練には歯を食いしばって耐えても、娘を思う気持ちは抑えきれない様子を女性監督らしい温かみのこもる共感をこめて描き、男性中心社会批判も忘れない。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
宇宙飛行士の母親としての側面に光をあて、女性の視点から過酷な訓練や共同生活を描くという発想が新鮮。娘との約束を果たすためにヒロインがとる危うい行動には、その立場にならなければわからない苦悩が表れている。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
宇宙飛行士の話だけど今まで見たことのない角度から描かれていて、いろんなことを初めて知った。娘さんの成長する表情が印象的。みんないろんなことを犠牲にして夢をかなえる。どんな仕事にも置き換えられる深い一本。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
若手の女性監督の野心作で、宇宙飛行士を主人公にしているが、メインは母娘の葛藤のドラマ。ドキュメンタリーのようなリアルな作風は監督の過去作と同様で、その点がSFと共存しているのが功を奏している。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年4月30日号