ティナさんに紹介されたのは日本人向けの小児科クリニックでした。スタッフは全員日本人で、ドクターはユーモアたっぷりの初老の男性でした。
「Hello!よく来たね~プリに行くのは楽しみ?」
■もう闘わなくていいのかもしれない
注射と検査と聞き、子どもたちは泣きそうになっていましたが、診察ベッドが消防車だったり、天井からバルーンが下がっていたり、何より先生の明るさを感じ取り、少しずつ笑顔を見せるようになっていました。
「えーっと、通うのはプリスクールね。今回はこれで大丈夫だけれど、もしまた来ることがあれば、日本と予防接種の回数が違うから調べておいてね」
「実はこの子は足が不自由で、日本での通常級の就学が難しそうでここに来ました。できれば今後、ビザを取って移住したいと考えているんです」
「ん? コウ? なんで学校に行かれないの?」
これまでの幼稚園探しや教育委員会に言われたことを簡単に説明すると、ドクターは少し考えてこう言いました。
「環境が整うなら、コウはハワイに住むべきだと思う」
この言葉を聞いただけで涙が出ました。
ここに住んだらもう闘わなくていいのかもしれない。
長女の闘病生活は病との闘いであり、もちろん悲しいこともたくさんありましたが、周りにはいつも励ましてくれるドクターや看護師さんがいました。
でも、息子の就園就学に関する悩みは対社会であり、そこには味方などひとりもおらず、どこに相談すれば良いのかも分からない状態が長く続いていました。
■処方箋なしでスーパーで買える
ハワイでの生活はまだたった2日でしたが、私の考えに共感してくれる人がすでに複数いることに、やっとトンネルの先に光が見えたような気持ちになりました。
そしてドクターにもうひとつ、とても重要なことを伝えました。
「娘は双子で、今回は日本に置いてきたお姉ちゃんがいます。脳性まひで寝たきりの状態で、食事は流動食と、エンシュア(※現エネーボ)という処方された栄養剤を入れています。医療費なども含めて、今回の滞在で長女が暮らせるのかどうかも調べたいと思っています」
「あ~ENSUREね。アメリカでは処方箋なしでスーパーで買えるよ」
「えっ?」
「フライトは可能な状態? なら大丈夫。普通の風邪くらいならここで診られるし、何かあれば紹介するから、Kapiorani Hospitalに行けば良い。カピオラニ知ってる? オバマ大統領が生まれた病院。そうそう、アメリカの医療費はすごく高かったんだけれど、ちょうどオバマケアができることになったから、娘さんは今後、月に80ドルくらい払えば医療を受けられることになるよ」